『虎と月』
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- 2020/11/24(Tue) -
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柳広司 『虎と月』(文春文庫)、読了。
中島敦の「山月記」をモチーフに、虎となった李徴の息子が、 父を探しに旅に出る・・・・・。 最初、「あれ、『山月記』って、虎になったあとどうなるんだっけ??」と記憶があやふや。 どこまでが原作にあって、どこからが本作の創作なのかわからないまま読み始めましたが、 「ええい、虎になった以降は全部本作の創作だ!」と決めつけてしまいました。 その方が楽しめそうだから。 息子は、虎になった父と会話をしたという手紙をくれた袁傪に、まずは会いに行きます。 しかし、訪ねた先には袁傪はおらず、内戦平定の関連業務で他所へ赴任中とのこと。 ここで書生とやりとりがあるのですが、なんだか要領を得ない問答が繰り広げられ、 あぁ、本作は父の虎話の真相よりも、息子の成長譚なんだなと了解。 続いて袁傪が虎になった父と遭遇したという町へと行きますが、 この町では地元住民から冷たい対応をされます。 この冷たい対応といい、先般の要領を得ない問答と言い、 なんだかRPGの世界観を小説にしたような印象でした。 原作「山月記」の漢文調の重々しい雰囲気とは異なる、 微妙にポップなファンタジー感があります。 「山月記」ファンからすると、ちょっと違和感を覚えるかも。 最後、虎になった真相に迫りますが、私的には、そういう解釈もありだなと感じられました。 少なくとも、こじつけ感はないように思いました。 こうやって、後世の作家が、知恵を絞って新たな作品を捻り出そうと思えるだけの エネルギーを持っている原作なんだろうなと、原作の力強さに感じ入った読書となりました。 ![]()
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