『凍える牙』
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- 2007/07/21(Sat) -
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乃南アサ 『凍える牙』(新潮文庫)、読了。
ファミリーレストランでのお客の焼死に端を発した連続殺人事件。 人体発火にくわえ、大型犬に噛み殺されるという 異様な死因の連続に、犯人像を知りたいという気持ちが掻きたてられていきます。 主人公である女刑事・音道とベテラン刑事・滝沢のコンビの 捜査活動を中心に話が進められていきますが、 主に描かれているのは彼らの心情であり、 彼らの地道な活動が捜査の進展に結びついた部分はあったとはいえ、 彼らが犯人をぐいぐい追い詰めていく謎解きの爽快感はありませんでした。 むしろ、後半、犯人の方から出てきてくれたような印象。 そして、動機が犯罪実行に繋がっていくところの描写が 不十分かなという印象も受けました。 恨みや欲望を抱く人間は大勢いますが、実際に犯罪に走るのは極わずかですから、 その極わずかな人間になってしまった理由は納得性のある理屈付けを してほしかったなという思いがあります。 それでも、私は、本作を面白く読めました。 音道や滝沢という刑事の活躍と苦悩の両方が描かれていて、 現実の刑事の姿を見ることができたように感じたからです。 物語の重心を、事件像ではなく刑事像に置けば、力作だと思います。 あと、本作には直接は関係ないですが、解説のレベルの低さが残念でした。
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