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『アーモンド入りチョコレートのワルツ』
- 2020/09/02(Wed) -
森絵都 『アーモンド入りチョコレートのワルツ』(角川文庫)、読了。

短編3つが収録されているのですが、ちょっと最後まで乗り切れない感じのまま終わってしまいました。
だんだんと面白い話になっていったのですが、冒頭の作品でのひっかかりが最後まで尾を引いた感じです。

冒頭の「子供は眠る」。
夏休みの2週間を、毎年、いとこの別荘で過ごす子供たち。
その別荘の持ち主の子供・章くんが、いとこ集団を率いて、
「午前中は勉強だ」「昼から海で泳ごう」「寝る前にクラシック音楽タイム」と
みんなの行動を決めていきます。

来年もこの場に集まりたいから、章くんの機嫌を損ねないように忖度しまくる子供たちの姿が描かれていますが
何もここまで忖度尽くしで描かなくても・・・・・と思ってしまいような窮屈な世界。
一体、彼らには、この場に居ることが楽しいのだろうかと、
根本的な謎が芽生えてしまう感じでした。

なので、最後、なんだか妙に爽やかな展開になっていっても、どうにも腑に落ちず。

その嫌~な余韻を残したまま次の「彼女のアリア」。
使われていない音楽室で偶然出会った少年少女は、
お互いに不眠症の悩みを訴え、急速に打ち解け合っていく・・・・。
でも、少年の不眠症はそのうちに解消され、そのことを少女に言えないまま
少女の不眠の悩みや家庭の悩みを聞き続けることに申し訳なさを感じはじめ・・・・。

いやいや、少女の家庭の悩みの話、もっと早い段階でおかしいって気づけるだろ!
不眠症治っても、頭の中は寝てるのか?というほど鈍感な少年です。

少女の不眠症ではない方の病気の話は、ある種の興味をもって読めたのですが、
それにしても話の展開がちょっとリアリティに欠けるなという印象で、乗り切れず。

で、最後の表題作「アーモンド入りチョコレートのワルツ」。
これは、登場人物のピアノの先生、その先生の家に突然やってきたフランス人、
ピアノを習う主人公の女の子と、その親友で一緒にピアノ教室に通うけどピアノを弾かず
横で歌を歌っているだけの少女。
主にこの4人で話が展開していくのですが、4人ともにキャラが立っていて面白いです。
大人2人の人間関係の変化も、子どもなりの観察力できちんと汲み取っていて
むしろ雑念のない目で見ているので、ストレートな観察が面白いです。

この4人をめぐる周囲の大人との距離感も絶妙な描き方で、
あぁ、他の2作品とは別の本に収録されていたら、もっと世界観にハマれたかもしれないのに・・・・
と少し残念に思いました。




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