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『理解という名の愛がほしい。』
- 2020/08/05(Wed) -
山田ズーニー 『理解という名の愛がほしい。』(河出文庫)、読了。

先日1冊読んだので、著者の作風がどんなものか分かった上での読書となり、
今回はじっくり腹を据えて読むことができました。

冒頭の「連鎖」というタイトルの文章。
悪意の連鎖を母に向けてしまったが、その母は悪意を周囲に連鎖されることなく・・・・・
という内容の文書でしたが、いきなりグイっと掴まれる感じでした。

悪意の連鎖という事象についても興味深かったですが、
それ以上に、自分と母との間の関係性が変わってしまいそうなぐらいの影響がありそうな
大きな出来事を赤裸々に文章に書いて、読者に開示できることがすごいな、
さすが物書きは自分の人生に対する覚悟が違うなと思ったんです。

ところが、後半の文章の中で、この「連鎖」という文章を書いてから
読者が見られる状態になるまでの間の、編集者とのやり取りの過程を読んだら、
ものすごく著者自身葛藤を感じていたようで、あぁ、鉄人なのではなく生身の人間なんだなと
共感を覚えました。

この人は、1行1行の文章に自分の思いを乗せようと
必死になって文章を書き、削り、加え、飾り、削ぎ、という作業を重ねてるんだろうなと
その真摯な姿勢が伝わってきます。

前回著作を読んだ時は、本人の人生の転機である退社について直接的な描写が無かったので
肝心なところがぼやかされているような印象を抱いてしまったのですが、
本作では同様に具体的な記述はぼやかされてても、モヤモヤを感じずに素直に読めました。

それは、具体的に起きた出来事はあくまで思考のきっかけに過ぎず本質的な意味合いはなく、
その出来事の後に、自分は何を考えたのかという思考の内容が重要なのだということを
私自身が読みながら納得していたのかなと思います。

ほぼ日読者の方とのメールのやりとりも、
著者の目線とは違う角度から意見が入ってきて、より著作の世界観が広がっているように思いました。

重たい思考を描いたまじめな文章なので、いつでも気楽に読める著作ではないですが、
気合を入れて読むと、その分、得るものがある文章を書く人だと思います。




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