柳広司 『贋作『坊ちゃん』殺人事件』(角川文庫)、読了。
夏目漱石の『坊ちゃん』の舞台と登場人物を使ったパロディ作品。
なんと赤シャツが自殺した!という事件の謎を追うのですが、
数ページ読んで気づいたのは、「あ、まだ『坊ちゃん』自体を読んでなかった!」という事実(爆)。
一般教養として、『坊ちゃん』の登場人物の仇名や大体のキャラクター設定は知っていますし、
大学入試の対策として抜粋文を読んだ記憶はあります。
なので、「あぁ、『坊ちゃん』っぽい文章だ!」というのは、素直に感じることができました。
この主人公の、ひねた感じが、凄く良く再現されているなと。
解説でも「本家を読んでいなくても楽しめる、本作を読んだ後に必ず本家を読みたくなる」と書かれているように、
日本人一般の『坊ちゃん』知識を持っている人なら、本家を読まなくても十分楽しめると思います。
『坊ちゃん』の世界観が、社会主義と自由民権運動の思想闘争だった!という解釈は
とても斬新で興味深かったです。
しかも、自殺事件を絡めて、本家『坊ちゃん』の世界で起きた出来事について
思想闘争として再構築することに成功していると感じました。
この組み立て力は凄いなと。
一方で、やっぱり、細かい『坊ちゃん』のエピソードとのリンクを楽しもうと思ったら、
本家を読んでいないといけないわけで、解説が言う通り、本家を読みたくなる読後感でした。
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