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『異類結婚譚』
- 2020/07/18(Sat) -
本谷有希子 『異類結婚譚』(講談社文庫)、読了。

著者の作品は2冊目です。
前作では、グアムという明るい土地を舞台に、女3人を中心とする家族のドスグロ旅だったわけですが、
本作は夫婦関係が主題です。

「ある日、自分の顔が旦那の顔とそっくりになっていることに気が付いた」という冒頭の一文は
秀逸な導入だと思いました。
しかし、主人公の妻目線で語られる夫の描写が不気味で気持ち悪く、生理的にダメでした。

最初は、外面が良くて、家の中では横柄なタイプの人なのかなと思っていたのですが、
近所の女性とトラブルになった時に(この女性も変わってるのですが)、
途中から対応を妻に丸投げして、しかも終わってから妻に文句を言うという流れに、
「え、何この人!?」という嫌悪感が先立ってしまい、以降、敵視しながら読んでしまいました。

後半になるにつれて、この夫が妻に対して
「サンちゃんも俺とおんなじでしょ。本当は何も考えたくないのに、
 考えるふりなんかしなくって、いいじゃない」と言い放つのですが、
それに対して何も言い返せない妻に、私は、「似たもの夫婦なんかい!」と
妻にも敵視感覚が芽生えてしまい、共感要素ゼロになってしまいました。

途中で、猫捨てのエピソードが入ってきて、
群馬の山中に行ったあたりから、物語全体がふわふわと異世界に入っていったような感覚で、
旦那も妻も猫の飼い主も、みんな、この世に存在している人たちなのかしら?と思えてきましたが、
それを差し引いても、人間の気持ちの悪い部分が見えてくる作品で、苦手でした。

併録されている作品も、夫が藁で出来ていて、「なんで私は藁なんかと結婚したのかしら?」と
悩む妻など、正直、意味不明な世界観が続き、それが人間の明るい部分と繋がっていたら読めたのですが
人間のドスグロい部分とか、嫌~な部分とかに直結している描写だったので、
読み進めるのが辛かったです。

解説で斎藤美奈子氏が言うには、著者は「こじらせ女子」をリアルに描ける作家らしいのですが、
ダーク側にこじらせている作品には、ちょっと近づきたくないなぁと思ってしまいました。
3冊目に手を伸ばすか、悩みどころです。




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