『不倫は家庭の常備薬』
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- 2020/07/05(Sun) -
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田辺聖子 『不倫は家庭の常備薬』(講談社文庫)、読了。
不倫をテーマにした短編集。 現在の「不倫は悪!」と断罪する時代においては、口にできないようなタイトルです(苦笑)。 上司とOLみたいなありきたりな設定ではなく、 主婦と60代・70代のオジサマというような変化球が多く、 性的な欲望だけではなく、洒脱な会話とか、余裕のある物腰とか、 そういうダンディーな部分がいかに魅力的かというようなところが描かれており、 なるほどなぁと思いました。 確かに、2人の間で会話が「弾んでる」んです。 対照的に描かれる家庭での夫婦の会話は、ブツ切り、単語、投げやりな感じで、 なんのために一緒に住んでいるのか分からなくなるような味気無さ。 それに比べて、不倫の2人の会話の面白いこと、楽しいこと。 そりゃ、不倫しますわなぁという感じです。 そして、そんな魅力的な会話ができるオジサマも、 家に帰ったら味気ない単語の会話を交わしていることも書かれており、 夫婦っていったい何なんだよー、と、結婚歴のない私には謎が深まるばかり。 うちの両親は結構会話する方なので、小説に登場する味気ない夫婦っていうのが良く分かりません。 それはさておき、田辺作品では、やっぱり関西弁の小気味良さ。 関西人の独特なノリの良さが、一片たりとも失われることなく再現できるのが 田辺表現の凄さだと思います。 本作でも、特に不倫の2人の会話シーンが面白かったのですが、 それ以外にも、喧嘩中の夫婦の間で夫が妻を「鬼おっかん」と表現したり、 このあたりの関西人のユーモアセンスって、抜きん出て凄いなと思います。 初版は1989年と30年以上も前ですが、生き生きとした短編集でした。 あけすけな性的描写もあり、バブルの残り香なのかな?と感じてしまう時代感でした。 ![]()
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