『漁師の愛人』
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- 2020/06/13(Sat) -
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森絵都 『漁師の愛人』(文春文庫)、読了。
森絵都さんのイメージって、なんとなくキラキラ青春小説!って感覚があったのですが、 こんな情念の世界も描けるのかと驚いた短編集でした。 女性の目から見た男性という存在を書いたものが多かったですが、 男の自分勝手なところとか、周辺社会を見ているようで見ていないところとか、 辛辣な評価なのですが、ダメなところも含めて女性側が受け入れてあげているような 懐の深さというか諦念というか、そんな女性らしい(苦笑)ところも描かれており、 結局、考え方やレベルが似ている男と女がくっつくんだなぁと思ってしまいました。 サイバラ女史もそう言ってましたしね(笑)。 3.11が各物語の中で人生観の転換のきっかけになっていて 東北に住んでいなくても、あの揺れの日々を経験した者にとっては、 地震の前と後では違う自分になっていたんだろうなと改めて思いました。 私自身も、東京で揺れる日々を過ごして、 直接的ではないにしろ、その後、東京を離れて地方で生活することを考える遠因の一つに なっていたのかもしれません。 プリンアラモードの話とか、くすっと笑えて好きでしたが、 やっぱり本作では表題作の「漁師の愛人」ですね。 タイトルからしてキョーレツ。 脱サラして故郷で漁師になった中年男と、それにくっついて移住してしまった愛人、 そしてなぜか愛人のもとに親しげにしょっちゅう電話をしてくる本妻。 なぜかこの3人の人間関係は変な安定の仕方をしているのに、 愛人にとって悩みの種は、移住先の田舎の人々の好奇の視線と蔑みの視線。 愛人という存在に対する田舎の拒否反応の描写が強烈です。 それに対して悩みながらも腹を据えてしまう主人公の強さが際立ち、 なぜか最後は前向きな気持ちになれてしまうという面白い作品でした。 Amazonでの評価が思いのほか低かったのが納得いかない・・・・。 ![]()
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