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『キケン』
- 2020/05/08(Fri) -
有川浩 『キケン』(新潮文庫)、読了。

大学の理系サークルを舞台にした青春モノのようだったので
気楽に読めるだろうと手に取りました。

機械制御研究部、略して「キケン」だそうですが、
4年生は実質引退済、3年生は幽霊部員のみ、2年生は2人のみというキケンに
新入生として強引に誘われるところから話はスタート。
この2年生、成南のユナ・ボマーと大魔神のコンビがなかなか良い塩梅で面白いです。

リアリティあるかと言われれば疑問符の方に傾いちゃいますが、
大学青春モノの登場人物としてはアリかなと。

むしろ、主人公の新入生2人組の方が、イマイチすっきりと通る軸がないような気がして
キャラクター設定に曖昧さを覚えてしまいました。
ただ、「お店の子」という設定自体は、私自身も「お店の子」なので、共感を覚えました。

個人的には、タイトルからして、もっと理系要素が強い物語なのかなと思ったのですが、
最初の上野部長の登場話ぐらいしか理系的要素はなかったです。
ロボコンの話もありましたが、そんなに踏み込んで描いているようには思えませんでした。
ヤバい上野部長と中心に、理系テクニックを駆使して暴れまわるような
コメディ活劇かと思っていたので、そこは空振りでした。

どっちかというと人間的魅力でサークルをまとめあげていく組織統制論的な視点が
要素としては強く感じました。

そして、一番大事なのは、「バカを一生懸命やる」ということですよね。
大学生の頃にやっておくべき最大のことは、これだと私は思っています。
本作では学園祭の模擬店のエピソードが書かれていましたが、
こういう、学生の本業である勉強とは別に、何か目標を立ててただひたすら知恵を絞って
仲間と協力し合って、1つのことを達成しようとすることって、のちのちの大きな財産になりますよね。
それが、バカなことであるほど、「この仲間とじゃないとバカバカしすぎてできないことだ」
という変な思いが募って、より没頭できるような気がします。

最終章、卒業して10年も経ってから、また学園祭の場に足を運ぶこと、
でも、誰にも会えなかったら寂しいと思って行くのを躊躇うという気持ちは良く分かります。
最後の黒板のシーンは、ちょっとキレイごと過ぎるかなとも思いましたが、
こういう仲間がいるというのは、素直に人生の宝だと思います。




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