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『共生虫』
- 2020/04/07(Tue) -
村上龍 『共生虫』(講談社文庫)、読了。

何年も引きこもりだった男が、インターネットの世界で出会った「インターバイオ」なる集団と
コミュニケートするようになったことをきっかけに、「共生虫」の生贄を求めて外の世界に出ていく・・・・。

前半はグイグイ読ませてくれて面白かったです。
後半は失速。思ったほど世界観が広がらなかったので尻すぼみ感。

前半の面白さは、引きこもりという極端に閉塞した世界に住む主人公が、
ネットの世界に触れ、自分の子供の頃の体験を深掘りしようとしたことで
接点を持った知らない人からの言葉に引き込まていく過程です。

私は基本的に、精神的に不安定な人の描写は苦手なのですが、
本作における主人公のモノの考え方は、歪んでいるなりに筋が通っているように思え、
そんな彼が引きこもりからネットの世界に移行していく理由に納得できた感がありました。

彼の家族に対する評価みたいな部分はもうちょっと詳しく読みたかったなという感じはあります。
なんでこんな息子ができてしまったのかというところを
母親や父親、兄弟との関係性から知りたいなと思いましたが、
まぁ、それは本作の主題ではないから望んでも仕方ないかな。

で、問題の後半ですが、
ネット世界の知らない集団から送られてくるメールに反応して、
引きこもりを捨てて、部屋の外に出て活動するようになります。
この外の世界での活動が、やたらアクティブなんですよね(苦笑)。

引きこもりのようなことをしてる人が、こんなに初対面の人と普通に会話ができるのか?というような
精神的な面の描写よりも、まず気になったのは、こんなに体力あるの?ということ。
女の後を付けたり、計画に必要なものをあちこち回って買いそろえたり、
雑木林の中でサバイバルのようなことをしてみたり。
部屋の中でじっとしてた人が、いきなりそんなに行動したら息が上がっちゃうんじゃないの?と
物理的な面で疑問に思いました。

そして、やたら段取りが良かったり、行動に無駄がなく効率的だったり、
前半と同じ人物なのだろうか?という感じでした。

終盤、彼が準備万端で完遂した計画についても、
これをやることに何の意味があるのか良く分かりませんでした。
その点では、精神が歪んでいる人の論理性の脆弱さが、ここにきて気になってしまいました。

計画完遂により、彼は引きこもり男から、一般人を超越した経験を積んだ男になったかというと、
物理的な部屋に引き籠っていた男が、精神的に自分の世界の中に引き籠っている男になっただけで
結局社会性はないままなのが、救いがないように感じました。

最後、主人公にとっては、すごく明るい未来が待っているような感じで終わりましたが、
読んでいるこちらとしては、尻切れトンボで終わってしまった印象でした。




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