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『カソウスキの行方』
- 2020/03/10(Tue) -
津村記久子 『カソウスキの行方』(講談社文庫)、読了。

これは面白かったです。

最初、「カソウスキ」って誰なんだろう?と人名だと思っていたら、
なんと「仮想・好き」という意味だそうで、
左遷された独身28歳女子が、あまりの日々の無常さに、
左遷された先にいた唯一の独身男性を好きになってみようと無駄な努力をしてみる様を
描いています。なんだ、その現実逃避は?って感じです(笑)。

まずもって左遷理由が可哀そう。
後輩女子にセクハラの相談をされたと思って上司に進言したら、
セクハラ加害者と被害者は実は付き合っていて、セクハラ自体を否定されるという始末。
面倒ごとを起こしたということで倉庫業務に左遷。
あーあ、お人好しにもほどがあるよ。
恋愛の愚痴とセクハラを間違えるほど恋愛に冷淡な人なのかもしれませんが。

で、行った先の倉庫の仕事が暇すぎて、本社から郊外の倉庫に行ったら日常生活も平板で、
仕方なく倉庫に居た男性社員が恋愛対象になりうるか調査を始めますが、
自分自身で「好きごっこというより興信所ごっこ」と思ってしまうほど
単なる情報収集活動になってしまいます。

このへんの、自分を含め、社会や世代を突き放して眺めるスタンス、好きだわ~。
そして、「カソウスキ」なんてやってしまうタイプだと、社会から孤立してる人なのかな?とも
思えてしまいますが、意外と、同居用に部屋を提供してくれる友人が居たり、
社内にも愚痴をこぼせる同僚が居たりと、意外と人間関係に恵まれてるなと。
こういう人たちがいないと、本格的に拗れちゃいそうですけど。

津村作品の、こういう醒めた女性像が好きなので、
これからも作品を追いかけていきたいと思います。

併録されている他2作は、表題作に比べると、あんまり印象に残りませんでした。
やっぱり津村作品は、私には当たりはずれがある感じ。




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