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『「みかん島」の介護日記』
- 2019/12/14(Sat) -
山口放送 『「みかん島」の介護日記』(ワニブックスPLUS新書)、読了。

たまたまブックオフで目に止まった本なのですが
地方における介護事業の在り方を知れるかなと思い買ってみました。

地元高校の福祉科を卒業し、晴れて大きな介護施設に就職した少女2人。
しかし、勤務先では介護が作業になってしまっており、
自分たちが理想とする「お年寄りに寄り添った介護」ができないと感じ、
2人で生まれ故郷に戻って、介護事業を行うNPO法人を立ち上げます。

23歳で起業するというのは、相当な馬力だと思います。
ただ、気合を入れて起業したというよりも、この2人の場合は、
自分たちがやりたい介護の姿を実現するには
既存の介護施設ではできないとわかったので、自分で事業を立ち上げるしかなかった・・・・・・という
ある種、自然体で生まれたような事業です。

しかし、2人の就労環境は「過酷」という文字しかないような状態です。
たった2人で、24時間365日の訪問看護を行おうとするので、
ろくな睡眠時間もとれず、食事もままならず、ただひたすら頑張るだけの毎日。
介護を受けている高齢者の喜ぶ顔で美化していますが、
事業の継続性という視点から見ると、破綻してしまっている事業モデルだと思います。
好きなことを仕事にしてるんだから、とことん無理を押し通せ!的な
やりがい搾取のような労働環境です。
まぁ、この場合は、自分たちが事業主なので、「搾取」ではないですが。

彼女たちの目指す理想はわかります。
もし、自分の親が要介護の状態になったときに、
彼女たちのような人に支援してもらえたら、家族として幸せなことだと思います。

でも、きっと、介護の世界に身を投じた人たちは、最初はみんな同じ理想を掲げていたのでは
ないのかなと思います。
ちょっと想像してみただけでも、介護の世界は24時間365日サービスを求められる世界ですし
高齢者の健康に責任を持つ仕事であり、肉体的にも精神的にも大変な仕事だと分かります。
そんな世界に身を投じる人は、なんらかの理想像をもっていることが多いのではないでしょうか。

しかし、理想像だけでは日々の生活が運営できないことも、すぐ想像できることです。
高齢者の人数が増え、しかも今がピークでこれから人口が減ってくるなると
これ以上の投資はできず、今が一番大変な時なのかなと。
介護が作業になってしまうことは、やむを得ないと思います。
そこに理想像を求めるのは酷なことかなと。

本作の主人公の2人は、あえて、自分たちの理想像にこだわって事業をしますが、
その結果として、本文の中でもさらっと、彼女たちが数日過労や貧血で入院したとか書いてあり、
さすがに介護の世界を美化しすぎなのではないかなと思ってしまいました。

彼女たち個人の思いを汚すつもりも非難するつもりもないのですが、
事業経営者という目線で見ると、やっぱり彼女たちの事業には歪なものを感じます。

本作では、介護者としての彼女たちと、被介護者としてのお年寄りとの
個人対個人の交流に限定して描いているようなところがあり、
事業全体を総括するような視点をあえて消し去っているように感じました。
もし、著者の思いが、彼女たちのような介護の在り方を全国に広めたいというところにあるなら
事業構造の部分をしっかり考察し評価すべきではないかなと思います。

終盤、ナオミさんが、介護の仕事をできなくなってしまった原因を想像すると
余計に事業そのものをしっかりと見つめ直すべきだと思ってしまいました。

リエさん、ナオミさんという実働部隊、現場の求心力かつ動力源となる人に加えて、
事業経営ができる人との3人体制で事業が展開できたら
さぞかし面白いことになっただろうなと思えてしまい、そこが残念です。

逆に、自分たちの理想を実現させようと、ここまで介護事業に尽くす姿は
神々しいほどに魅力的です。
ここまで一心に尽くせる仕事を見つけられるというのは、うらやましい限りです。

読了後、「NPO法人海祐会」で検索してみましたが、
こんな風にTV密着取材を受け、書籍化までされた事業者にもかかわらず
大した情報がヒットしてこないところをみると、
書籍化された後に、何かあったのかな?と勘ぐってしまいます。




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