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『紙の月』
- 2019/10/23(Wed) -
角田光代 『紙の月』(ハルキ文庫)、読了。

銀行のパート従業員が、横領事件を起こして逃亡。
なぜ、そんなことになってしまったのかを当事者の視点を中心に
関係者何人かの視点も交えながら描いていきます。

時々、ニュースで「女性行員が〇億円を横領」というものが流れますが
いつも「そんなお金をどうやって使うんだろう?なんでそんなにお金が必要なんだろう?」と思ってました。
男の人は、ギャンブルに使った等の理由を聞くと、そうかもなぁ・・・・と思っていたのですが、
女の人はどうにもイメージが付いていませんでした。
男に貢いだという理由がオーソドックスなのかとは思うのですが、
自分が行うギャンブルと違って、どうやったら他人のためにそんなにカネが使えるのかと不思議でした。

で、本作を読んで、あぁ、そういう形でお金を使っていくのかぁ・・・・と何だか非常に納得してしまいました。
このケースがオーソドックスなのかどうかは分かりませんが、
ものすごい説得力をもって迫ってきました。
この人生に共感はしませんが、こういう人生が世の中にはあってしまうのだなぁという。

この主人公をはじめ、旦那といい、友人といい、登場してくる人みんな「見栄っ張り」。
様々なことをカネで計ろうとする人たちばかりです。
私自身、カネに換算するという行為はよくするのですが、
私の場合、気にしているのは「収入」側です。稼ぎの換算。
例えば自分の労働対価は時給いくらぐらいになるのかとか、
30分歩くのと300円払ってバスに10分乗って浮いた20分で仕事するのと
どっちが得かとか・・・・・みみっちい話ですが。

一方、この本に登場してくる人たちは「費用」側で自分を測ります。どれだけ使ったか。
どれだけ高いものを買ったか、どれだけ多くのお金を使ったか。
それって、お金をばらまいているだけで、自分自身の価値にはならないのに、
金払いの良さが自分の価値を規定しているように思ってるんでしょうね。

わたくし、以前は金融機関に勤めていたので、
こういう「費用」側で自分の価値を測る人たちがお客様の中に多数いたと思うのですが、
私を含め貸す側は「収入」で自分の価値を測る人たちがほとんどだと思います。
貸す側と借りる側の溝ってどこまで行っても埋まらないんだろうなと・・・・。
当時、私は、住宅ローンや車のローンは理解できても、
なんで金利を払って小口のカネを借りようと思うのか理解できなかったのですが
たぶん、死ぬまで理解できなさそうです。行動原理が違うから。

お金のリテラシーって、ほんとうに大事だと、本作の怖さを通して感じ入りました。




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