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『放送禁止歌』
- 2019/07/19(Fri) -
森達也 『放送禁止歌』(知恵の森文庫)、読了。

ブックオフで本を物色中、本作のタイトルを見て、「なんか変な本があるなぁ」と手に取ったら
森達也作品と分かり即買い。
こりゃ骨のある本になってそうだ!と思って。
本作を読んでみたら、著者の出世作のようですね。
そこまでは知らなかった(苦笑)。

さて、そもそも「放送禁止歌」というものがあること自体を知りませんでした。
オンエアに乗せにくい歌詞の歌があった場合、日本では自主規制という名の
業界ルールができて一律規制されるという流れになるのは良く理解できます。
でも、そういうルールに抵触するような歌が、ヒット曲・歌謡曲の中に存在しているというのが
ピンとこなかったというのが正直なところです。
それは自分が、フォークソングというジャンルに無知だからだと思います。
どういう世界観を歌っているのかが分かってないから、ピンとこなかったのかなと。

本作では、放送禁止とされている歌詞の数々が紹介されており、
じっくり読むことができます。
こんな厳しい情景、寂しい情景を歌にしていたのかと改めて驚きました。
一方で、「自主規制するほどの歌詞なのかな?」という疑問を覚えたのも事実です。

この流れに部落解放同盟が登場してきて、複雑な様相を呈してきます。
同和問題で読んだ本は一冊しかないので、偏った知識しかないのですが、
本作に登場してくる解放同盟の人々は、モノゴトの本質を冷静に見ている感じで
私が持っていた恫喝グループの印象とは大違い。

同和問題って掴みどころがないなぁと改めて感じました。
私が通っていた中学校では、同和教育に熱心で、しかも熱が入った頃でした。
定期的に同和問題について話を聞く時間があったのですが、
一番印象に残っているのは、同和問題そのものについての中身ではなく、
先生が「わが校は県内で先駆けて同和問題に取り組んでいる」と誇らしげに語っていたこと。
難しい問題に自主的に取り組んでますよ!というようなポーズが
子ども心に違和感を覚えました。

そういう歪んだ意味を持つテーマなので、
マスコミ人は、基本的に自主規制したくなるんでしょうね。
その心情は良く分かります。
本作では、マスコミ人に気概はないのか!というような糾弾トーンがありますが、
正直、私は、マスコミ人とはいえ企業に属したら、自主規制には従いますわよと
テレビ局の人を擁護してしまうような気持ちになってました。
私、元金融マンなので、自主規制という業界ルールに馴染んでいて
それを一社員が跳ねのけるのは無理だと感覚的に理解できます。
著者の立場だからこそ、この問題提起ができたのだろうなと。

あと、本作では、後半にデーブ・スペクター氏との対談が収録されており、
アメリカにおける放送禁止歌の概念との比較で、日本における問題がより鮮明に描かれており
とても理解しやすかったです。

取材期間中、著者自身の心の揺れや、
部落の関係者に向けた自分の質問や視線、口から飛び出してしまった言葉など
そのまま収録し、その際に自分がどう感じていたのか、どの点に無意識だったのかも書いており、
同和問題を知識としてしか持っていない私自身がその場面に居合わせたら
どう感じるだろう、どう行動するだろうかという想像が膨らんでいき、
いろいろと多方向に思索が広がっていく読書となりました。

こんなテーマに時間をかけてガッツリ取り組んだ著者は、
やはり社会に問題を提起していく人物として、しっかり追っていかねばならないなと再認識しました。




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