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『向田邦子の青春』
- 2019/05/14(Tue) -
向田和子 『向田邦子の青春』(文春文庫)、読了。

脚本家・向田邦子は、私が物心つく前に亡くなっているので
同時代性は感じられない人物です。
なのに、その小説作品やエッセイを読むと、
女性の気持ちの描写が細やかでぴったり寄り添っている感じで、
自分自身を投影できるような印象を持ちます。
すごい才能ですね。

そんな向田邦子の若かりし頃を、末っ子の妹目線で綴ったのが本作。
邦子が10代~20代の頃がメインとなっており、
脚本家として売れていく直前までといった感じです。

まず何よりも、この和子さんの書く文章が非常に読みやすいです。
読みやすいだけでなく、テンポとリズムがあり、
簡潔な言葉で描写しているのに、その景色が目の前に立ち上がってくる感じです。
プロフィールを拝見すると、喫茶店経営の後小料理屋を経営ということで、
特に文筆業の方はされていないようですが、
これは向田家の血なのでしょうか、それとも姉の影響なのでしょうか。

邦子とは9歳年が離れているということで、
かなり面倒をみてもらったようで、その一つ一つが描かれていますが、
文章が書け、裁縫もでき、人への気遣いもでき、自分の人生を切り拓いていける、
なんて素敵な女性なんでしょう。
そして、妹の心に残る、それこそ何十年も大事に思っている言葉を
様々な場面で与えてくれた姉というのは、大きな存在ですよね。
私は第一子で近くに住んでいるいとこは皆年下だったので
お姉さん、お兄さんという存在とはどんなものなのだろうかと、妄想してしまいます。

そして本作でもう一つ特筆すべきは、たくさん収録された邦子の写真。
日常のスナップショットというより、カメラの前で着飾ってポーズを決めたものが多く、
「あれ?向田邦子のお父さんかお母さんって、有名人だったんだっけ?」と思ってしまうほど。
正直、自分が10代~20代の頃って、こんな気取った写真、1枚もないですわよ(爆)。
昭和の時代に、これだけ一般人の若い女の人でポートレートを撮っている人って、
珍しいのではないでしょうか。
それとも、今見たいに気軽に写真を撮れない環境だったから、いざ写真を撮るときは
こうやってキメキメでポーズをしたものなんですかね?よくわからん。

この写真があるだけで、向田邦子という女性の特異さが5割増しになっているような気がしました。




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