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『月と蟹』
- 2019/02/03(Sun) -
道尾秀介 『月と蟹』(文春文庫)、読了。

直木賞受賞作品という情報以外、何も前知識のないまま読みました。
そのため、いつものグロい世界が感じられる道尾作品なのかな、
直木賞を獲るぐらいだから、よっぽどグロいのかなと期待してしまいました。

結論から言うと、直木賞を獲れる程度にグロさがマイルドになった作品でした。
私が期待している道尾作品とは、少し違ったかなというのが正直な感想です。

主人公は、鎌倉に引っ越してきた小学生。
学校のクラスになじめず、一緒に遊ぶのは同じ引越し組の境遇の男の子だけ。
2人で毎日のように海岸に行っては、
小魚やヤドカリを捕まえて遊びます。
海から連れ出して、小穴の中の水たまりで育てようとしたヤドカリがほぼ死んでしまい
唯一残ったヤドカリを「ヤドカニさま」として神格化したり。

この前半の描写で、「子供っぽいなぁ」という感想を持ってしまいました。
普通の小学生の男の子なんてこんなもんだと思いますが、
なんせ道尾作品ですから、頭でっかちな少年像を求めてしまうんですよね(苦笑)。

この男の子2人だけの遊びに、同級生の女の子が加わってから
3人の中の人間関係が複雑に変化し始め、小学生らしい愛憎が始まります。
そして、主人公の家では、父親と死別した母親に新しい恋人の影が見え隠れし、
少年は家でも愛憎の感情に巻き込まれていきます。

このあたりの心理描写はさすがだなと思いました。
特に、子どもの間での細やかなしぐさや表情に出る愛憎の感情を丁寧に描き、
それを見つけた子供がどんな風に感じ取るのかもよく描けていると思います。
このあたりが、直木賞受賞作の理由なのかなと私は感じました。

一方で、思いのほか子供たちは大人な考えを持っており、
自分の愛憎、とくに憎の感情を、自分の中に押し込めて耐えようとします。
ここで爆発したり、尖がったりするのが道尾作品らしさだと思っているので、
ウジウジしている感想を持ってしまいました。
スカッと感が足りないというか。

最後の展開も、ある種、スカッと感がないのですが、
これはこれでリアリティがあったかなと。
というか、現実世界なんてこんなもんだろうなという印象を受けました。

解説で、伊集院静氏が、道尾作品における少年について
「少年たちは哀しみを抱いていることに戸惑っている」と表現しており、
それは、まさにその通りだなと思ったのですが、
そお戸惑いが外に向けて爆発することを願ったのが私であり、
本作では内で処理されてしまった感じでした。




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