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『暗鬼』
- 2018/12/01(Sat) -
乃南アサ 『暗鬼』(文春文庫)、読了。

お見合いで一目惚れした主人公。
優しそうな夫は、両親だけでなく、祖父母や兄弟も一緒に住む大家族だった。
しかし、嫁姑問題が起きるでもなく、小姑にいじめられることもなく、
毎日皆が笑顔の楽しい家庭生活が始まった。
そこに、突然、怪しい男が現れ、何かをおどおどと伝えようとするも、姑に遮られ・・・・。

姑をはじめ、家族みんなが嫁に優しく、笑顔を振りまき、気を配る。
もちろん旦那は優しく、常に自分を一番に扱ってくれる。
これって、本人にとっては嬉しくて仕方がない状況なんでしょうね。幸せ満喫。
でも、文章になって客観的な立場から読むと、すごく不気味、気持ち悪いです。

自分を取り巻く新しい家族が、何か目論見を隠し持って行動しているという状況が、
こんなに恐ろしいホラー作品になるとは思いませんでした。
こりゃあ、乃南さん、上手いなあ・・・・・と思って読み進めていました。

この一家が貸主だった建物が、ガス爆発事故で一家全滅。
あの、主人公に何かを伝えようとしていた怪し男の家族です。
家主として慌てるのかと思いきや、いつものように笑顔を絶やさず暮らす家族に、
主人公は小さな不審を抱きます。
そこから、様々な日々の一場面が気になるようになってきて、
この家族は何か変なのではないかと、不審が不審を呼んで精神的に不安定な状況に。
この過程の描き方は、本当に怖くて、ぐいぐい読んでいけました。

で、彼女は、親友に相談するのですが、
外部に漏れたことで家族の態度が一気に硬化。
主人公を肉体的、精神的に追い詰めるような行動をとりはじめます。
この辺りの描写は、なんとなく、学生運動の中で行われた洗脳ってこんなのかな?
カルトで行われる洗脳ってこんなのかな?と思いながら読んでいました。

ただ、ここまで家族に対して不信感を持ちながら、
そこから脱出しようとしない理由が、「3か月で結婚生活に失敗したと思われたくない」という
なんとも曖昧なもので、この主人公がここまでしがみつく理由なのかな?と不思議でした。

という疑問が湧いてくると、そもそも、結婚直前に、
寝たきりの祖父と知恵遅れの弟がいると、いきなり告白されて、主人公ブチ切れ。
そこで結婚を躊躇するのかと思いきや、すんなり丸め込まれてます。
ここでもきっと、「この結婚相手を逃がしたくない」という理由にしがみついたのでしょうけど、
プライドが高く、かつ甘ちゃんなところがある主人公です。

このあたりから、だんだん読み進めるのが苦しくなってきました。
最初に起きたガス爆発事件への疑問は置き忘れのような状態で、
家族の中で、いかに主人公を洗脳するかということばかり描かれるようになり、
息苦しさが充満してきます。
主人公の性格に共感できないまま読まされると、
知らない他人がリンチされている姿を見ているようで、気持ちが重くなります。

そして、主人公は、この家族に飲み込まれていくのかと思いきや、
ふとした拍子に家族への不信感を口にしたりして、
なんだか思考回路が良く分かりません。
家族の怖さを描くために、あえて主人公に変なタイミングで変なことを口にさせているかのような
都合の良ささえ感じてしまいました。

最後、ガス爆発事故の真相とかも明かされますが、
なんだか、ただただ気持ちの悪い家族の素性をしっただけのような状態になってしまい、
この読書を通じて私は何を得たのだろうか?と空疎な気持ちになってしまいました。




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