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『はぶらし』
- 2018/11/02(Fri) -
近藤史恵 『はぶらし』(幻冬舎文庫)、読了。

「なんだか短編集みたいなタイトルだな」と感じたのですが、
がっつり長編です。

独身女性脚本家の携帯に、深夜、知らない番号から電話がかかってきた。
嫌だなと感じながらも、仕事の電話だといけないので応じたところ、
十年以上会っていない高校の同級生が「今すぐ会いたい」と・・・・。

もう、この出だしの時点で、私的には、「うわ、最悪な展開!」って感じです。
深夜に呼び出しというのも非常識だし、今すぐ会って欲しいという要求も非常識だし、
しかも行ってみたら幼い子供が一緒にいたという状況。
何よりも、「どうやって私の携帯の番号を知ったのか?」という不信感もあります。

でも、近所まで来られているという恐怖感も理解できます。
もしかすると家の場所まで知られているかもしれない。
そんな状況で、非常識な人間相手に冷たく断ると何をされるか分からない・・・・。

設定が上手いなぁと感じます。
バツイチ、子連れ、リストラで無職、家もない、こんな30代の女が
突然「友達だったじゃない!」という勢いで押しかけてくる・・・・恐怖です。

そして、最初の日に、押し切られて自宅に連れてきてしまった、
それがそもそもの間違い。
そして在宅期間を1週間という中途半端な設定にしてしまったのも判断ミスかと思います。
でも、突然のシチュエーションで、当人を目の前に、そこまで頭が回るかと言われると
私も心もとない感じです。

それからの日々は、案の定、押しかけ女のペースで動き、
1週間以上占拠されることに。
時々、状況が動く場面がありましたが、その時点で主人公がどんな動きをしようと
もう時すでに遅しってな感じでした。
主人公は、お人好しと表現されていますが、きつい言い方をすれば優柔不断。
多少嫌な状況に置かれても、「自分が我慢すれば」と考えてしまうので
事態を好転させる努力をあまりせずに、流されてしまいます。
後半は、そんな主人公にも少しイライラ。

いったい、この話をどんな風に終わらせるのだろうかと
中盤からは、そこに関心が集中しましたが、
リングの外の人を巻き込むという方法で幕引き。
ま、現実的な解決方法ですよね。
ただ、そこに場外から登場してくる人たちも、これまた常識の枠外から
ちょっとはみ出ていそうな人ばかりで、なんとも疲れます。

この押しかけ女の存在を、主人公は、シングルマザー、リストラ、家なしの三重苦で
負のスパイラルに落ち込んで可哀そうな人として捉えていますが、
私は、本作で描写される彼女の思考回路を読んでいくにつれて、
こういう人だから、離婚されるし、リストラの対象になるし、家も借りれないのではないかと
思うようになってしまいました。
いわゆる、今はやりの自己責任論。

全てが全て、本人の責任ではなく、環境や周囲の人が理由のこともあるでしょうけれど、
個々の困難事象の対応にとどまらず、負のスパイラルに落ち込んでしまう人は、
何か判断力や行動力に、他の人とは違うものがあるのではないかなと感じてしまいました。
恵まれた環境にいる人間の、上から目線の言葉だと言われてしまうと、それまでですが。

そんなことをいろいろ考える読書になりました。

近藤史恵は、すごい!




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