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『骨は珊瑚、眼は真珠』
- 2018/10/08(Mon) -
池澤夏樹 『骨は珊瑚、眼は真珠』(文春文庫)、読了。

幻想的な物語から、皮肉の効いたコメディまで
結構幅広なジャンルの短編が収録されていましたが、
楽しめたものと、そうでないものの温度差が激しかったかな。
個人的に、幻想的な味付けの物語が得意じゃないということもありますが。

好きだったのは、コメディタッチの「アステロイド観測隊」。
小惑星の食を観測するために、南洋の小さな国にやってきた観測隊。
目的の観測を達成するには、照明が邪魔な大統領官邸の噴水の明かりを消さなければ!
ということで、なぜか発電所に潜り込むことに(笑)。
この顛末を、日本に帰国し大学助教授になった主人公が学生に向けて語るという設定ですが、
主人公の皮肉なキャラ、南の国のおおらかな国民性、そして大騒動、
これら要素のミックス加減が絶妙でした。
へぇ、こんな作品も書くんだ!という驚きもありました。

それと、表題作の「骨は珊瑚、目は真珠」。
病気で亡くなった主人公が、死後に妻のことを回想した物語。
死んだことへの怒りや悔やみが感じられないさらっとした文章なのですが、
なぜか、この主人公なら、こんな感覚がありえそうだなと思えてしまう存在でした。
妻への温かな視線、友人たちとの思い出への感謝、そして自分の人生への満足感、
なんだかそういう満ち足りたものを感じる作品でした。




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