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『その数学が戦略を決める』
- 2018/09/09(Sun) -
イアン・エアーズ 『その数学が戦略を決める』(文藝春秋)、読了。

多量のデータを統計的に解析する「絶対計算」がもたらす効果、
実社会への導入事例、そして、その分野の専門家からの反発といったことを
様々な実証データを用いて説明している本です。

まず単純に、絶対計算で示される分析結果が面白いです。
その年のワインの品質を、気温、日照時間、降水量などのデータを解析することで
ブドウを収穫した時点で、出来上がりのワインの相場を予想できるというもの。
フランスやイタリアのワイン専門家が何百年もかけて自分たちの舌と頭に記憶させてきたものが
コンピュータ解析にとってかわられるということで、
当然、専門家からは激烈な反発が起きます。

この絶対計算と専門家の戦いにおいて重要なのは、
現実世界において結果が出るというところ。
ワインであれば、その年の相場が、結果的にどうだったかということが検証でき、
本作で述べられているのは、絶対計算の予測が当たっていたという結果です。

例えば地球温暖化のシミュレーションは、
50年後とか100年後とかの予測の話をしており、
正直、検証不可能というか、検証前に政策判断をしなければいけないので
投資後の検証になって、あまり意味はないですよね。
そういう、モヤモヤとした「科学」とは違って、
この本で登場してくる絶対計算はすぐに検証したり、
もしくは他の人間による再試行が可能であり、再現性が確認できるというのが
一定の説得力を持つ理由かなと感じました。

実際、私自身も、以前勤めていた会社で、
過去のお客様の利用動向データに基づいて、その取引がお客様本人の意思によるものなのか、
他人が悪用して行われた取引なのか、人工知能で判断してフラグが立ったものについて
人間が検証なり確認なりして最終判断を行うという仕事をしていました。

私自身に、この従業経験があるので、絶対計算に対する信頼感が
一般の方よりも高いかもしれません。
過去のデータを解析し、傾向をパターン化し、新たな事象を評価する、
これは機械に仕事を取られたのではなく、機械にやらせておけばよい仕事だと思います。
そして、機械が判断してきたスコアを基に、人間が最終判断する。
全部人間がやっていたら1日5件しか対応できないものが、機械を使ったら1日200件対応できる。
これは凄い生産性革命だと思います。

絶対計算が正しいのかどうかという議論よりも、
各々の絶対計算の確度がどのぐらいなのかを評価して、
それをどのように活用すべきなのかを議論した方が、
社会貢献度ははるかに大きいように思います。

そして、ワインの話に戻れば、基本的な相場予測は機械にやらせて、
人間の専門家は、ワインではなく、ワインを飲む人の方にもっと目を向けて、
そのワインをどれだけ美味しく飲めるか、楽しく飲めるかを
もっと情緒的な演出の面で価値をつけていくところなど、機械には担えない部分に
知恵を絞っていくことになるのではないかなと思いました。

この分野に関しては、10年後、20年後というスパンではなく、
3年後、1年後にどんな成果が出ているか、楽しみです。


その数学が戦略を決めるその数学が戦略を決める
イアン・エアーズ 山形 浩生

文藝春秋 2007-11-29
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