『スターバト・マーテル』
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- 2018/08/18(Sat) -
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篠田節子 『スターバト・マーテル』(光文社文庫)、読了。
久々の篠田作品。 ちょっと不気味な表紙絵。中編が2つ収録されています。 表題作は、乳癌を患い、人生に対する熱意が醒めてしまったかのような女性。 夫や親友の助けを煩わしく感じているかのような素振りを見せていた日々において 中学時代の秀才だが嫌われ者だった同級生とふいに再会して、 彼の存在に引き寄せられていく・・・・・。 主人公が、夫や親友に対して感じる微妙な思いや、 中学時代の少し苦しい思い出などの描写は、さすが篠田作品と思いましたが、 ちょっと私には共感できない部分が多くて、最後まで距離のある作品でした。 そもそも、主人公は乳癌を患っているのですが、 私の叔母は40代で乳癌で亡くなっており、叔母の必死に癌と闘っている姿を間近で見ていたので、 ガン転移の恐れがあるのに検査を受けなかったり、夫が必死で病院へ行くように勧めても のらりくらりと言を左右にしたりする主人公の姿勢が、私としては我慢できなかったです。 これはもう、個人的な感情の部分なので、作品の出来不出来とは関係のない部分です。 そして、中学時代の主人公と秀才君とのエピソードは興味深く、 また高校以降の秀才君の苦難の人生も興味深かったのですが、 現在の勤め先に就職してからの秀才君の人生展開が どうにもアクションものに急変してしまい、読んでいて置いてきぼりになっちゃいました。 もう少し、別の展開は用意できなかったのかなぁ・・・・・と。 併録されている「エメラルドアイランド」は、海外リゾートで結婚式をあげるカップルの話ですが、 マザコンならぬ、親友母娘の歪んだ関係がテーマです。 かなりコメディタッチになっているので、軽く読み進められますが、 冷静になって考えると、非常に気持ち悪い母娘関係です。 そもそも旦那側の親族の我儘が原因ではあるものの、 海外挙式に、当事者夫婦と嫁の側の母と嫁の親友の4人しか来ないって、 いったい、どういう状況なのでしょうか!? 旦那を置き去りにして、母娘で食事を楽しんだり、観光をしたり。 旦那は人間としての芯がないのか、そんな状況を受け入れてしまってます。 唯一外部の人間として参加した嫁の親友である主人公は、 この変な状況に違和感を持ち、嫁に対して忠告を何度もしますが 嫁の方は、何が変なのか全く分かっていないような反応です。 コメディタッチだったので、この気持ち悪さは、最後痛快な出来事を通して パッと晴らすんだろうなと予想しながら読んでいったのですが、 なんと嵐の直撃により大災害が起きて現場は大パニックという展開に。 うーん、こういう出来事による状況変化を求めていたわけじゃないんだよなぁ・・・・。 この本は、2作品とも、起承転結の「転」の部分が、 あまりにもブっ飛んでる感じがして、私の好みではありませんでした。
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