『ダイバーシティ』
- 2018/07/07(Sat) -
山口一男 『ダイバーシティ』(東洋経済)、読了。

どこかの書評で紹介されていたのでしょうか、
「読みたい本リスト」にあったので、ブックオフオンラインで購入。

シカゴ学派の社会学者が書いたファンタジー作品というのが売りのようです。
2つの物語が入っており、1つは少女の冒険物語、
もう一つはイソップ童話「ライオンと鼠」の改作秘話。

前者の作品は、読んでいる間のイメージは『ソフィの世界』でした。
少女が哲学の世界ならぬ、社会科学の世界を冒険していくイメージです。
ただ、様々な考え方の人や社会と出会うことで少女が思考を深めていく話と、
魔法使いが出題してくるトンチのような問題を考える話と
2つの次元の違うストーリーが展開しているようで、少し読み心地の悪さを覚えました。

著者のよる解説を読むと、トンチの方は、小説としての読みやすさを増すために
くっつけた要素に過ぎないようで、本題は、様々な考え方との出会いの方。
まさにダイバーシティです。

一つの、著者の理想のようなものを語っているのだとは思いますが、
少ない紙面で多くの社会科学のテーマを扱おうとしているため
ちょっと消化不良が起きているように思いました。
少なくとも、著者の解説まで含めて1つの作品として読まないと成立しないように思います。

一方、後者の方は、著者がアメリカの大学で教えている授業を場面設定とし、
そこで、イソップ童話の「ライオンと鼠」の「アメリカ版」と「日本版」を比較させ、
日米比較文化論を展開するというもの。
さらに、それぞれの作品に投影された社会の姿が古すぎるということで
新たに、「現代アメリカ版」と「現代日本版」を作ることに。

それぞれの寓話をもとに、学生たちの議論が展開されるのですが、
その内容が非常に濃くて面白かったです。
もちろん、著者が上手く編集しているのでしょうけれど、
でも、やっぱり、これだけの議論が展開される空間というのは熱いですね。

さらに、その議論に対する著者の心の中の声も文字にされていて、
それはそれで面白かったです。
自分が用意した仕掛けに対して学生がどう食いつくかとか、
この設問にはこの学生が答えそうだなという予想に対して現実の展開への驚きとか。
教える側も、学生の議論の中から得る気づきがあるんだなということが素直に分かり
興味深いやりとりでした。

そもそもイソップ童話が日本では改変されておかしな教訓話になっているというのは
良く指摘されることですが、その日本と欧米との文化の比較というのに加え、
現代社会の問題点を加味した創作話は、さらにピンポイントでそれぞれの社会を
象徴的に表現しており、面白かったです。


ダイバーシティダイバーシティ
山口 一男

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