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『日光中宮祠事件』
- 2018/06/16(Sat) -
松本清張 『日光中宮祠事件』(角川書店)、読了。

短編集です。
殺人事件あり、歴史ものあり、日常生活を描いたものあり、
ちょっと雑多な感じがして読みづらかったです。

ただ、1つ1つの作品は、やっぱり、しっかりしてますね。

印象に残ったのは、「情死傍観」と「老春」。
どちらも、ある人物の日常を追った作品です。

「情死傍観」は、阿蘇の噴火口のそばで茶店を開く老人が主人公。
自殺のために訪れる人に声をかけ、思いとどめるように働きかけをしている人物。
今まで何百人という人を助けてきたのに、わざと見逃した男女がいた・・・・。

この作品は、短い中で、作中作、そしてその後日談という形で
ある手紙が開示されるという凝った作りになっていて、面白かったです。

「老春」は、介護が必要な高齢になったにもかかわらず、
身の回りの世話をしてくれる通いのお手伝いさんに気持ちが動くお爺さん。
お手伝いさんを独占したいのに、来客の部屋に入っていったとか、
隣家の工事のペンキ職人と仲良くしゃべっていたとか、とにかく嫉妬しまくり。

で、怒鳴り散らすだけなら良くある話かもしれませんが、
このご老人、老体に鞭打って、お手伝いさんの家に押しかけたり
相手の男のところに乗り込んでいったり、勇ましいんです。

そんな姿を、息子夫婦の醒めた視点で描いているのが
緩急のつけ方として面白かったです。
息子夫婦的には、かなり面倒になって放っている状態。
お爺ちゃんが事故にあったり、他人に危害を加えたり、家の恥になったり
するようなことさえしてくれなければ、放置しておこう・・・・・みたいな諦め。

他人から見れば、痴呆老人ということになるのでしょうけれど、
家族だからこそ、突き放すこともできず、でも時間を奪われ続けるのも困るという
難しい感覚が伝わってくる作品でした。

というわけで本作は、松本清張と聞いて思い浮かべるイメージとは
違ったところに惹かれました。


日光中宮祠事件 (角川文庫 緑 227-23)日光中宮祠事件 (角川文庫 緑 227-23)
松本 清張

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