『箱庭図書館』
- 2018/06/13(Wed) -
乙一 『箱庭図書館』(集英社文庫)、読了。

久々の乙一作品は、なんだか可愛らしいジャケット。
6つの作品が収録されていますが、
ところどころで、それぞれの作品の関連が語られ、
そして最後の「ホワイト・ステップ」で、見事に昇華!!

いやぁ、これは面白い短編集でした。
独立した作品としても「ホワイト・ステップ」は素晴らしい!

冒頭の「小説家の作り方」。
山里秀太が小説家になったのは、極度の活字中毒の姉の影響なのか、
それとも習作を毎回読んでくれた担任の先生のおかげなのか。
強烈なお姉ちゃんのキャラと、それに圧倒される弟という
微笑ましい展開だったのに、オチが乙一でした(苦笑)。

「コンビニ日和!」は、島中さんのキャラが良かったけど、
お話自体はコント過ぎててイマイチでした。

「青春絶縁体」、こちらも、小山先輩のキャラが秀逸。
ここまで活き活きした毒舌キャラは、なかなかお見掛けしません。
でも、それは文芸部の部室の中だけ。
教室に戻ると状況は一変して・・・・。
この冷酷な感じが乙一作品だと思いました。
でも、主人公、勇気あるなー。さすが、その後、出世するだけのことはあるわ。

「ワンダーランド」、これは、正直、きちんと読み通せなかったです。
電気の通っていない冷蔵庫に女性の死体を詰め込んで放置という
その状況自体があまり想像したくないという生理的嫌悪もありますが、
登場人物たちが、何を思って行動しているのかが共感できませんでした。
私の苦手な、精神がちょっとズレた人の世界。

「王国の旗」は、子供たちが大人に反旗を翻して、自分たちの世界を作ろうとする話。
でも、大々的に反抗するのではなく、夜中に家を忍び出て、夜明けごろには帰るという
隠密裏の行動です。
中学生の反抗物語はリアリティがあって大好きなのですが、
小学生の反抗物語は、やっぱりどこかファンタジーですね。
でも、物語が動いた終盤の彼らの判断は、大人びてて凄いなと思いました。

そしてそして、最後の「ホワイト・ステップ」です。
大雪が積もった正月。一人やることがない主人公が町をぶらぶらしていたら、
雪面に不思議な足跡を発見。
その足跡の持ち主の姿は見えず、どうやらパラレルワールドの住人の様子。
そして、足跡の持ち主と、雪面のメッセージを介した交流が始まる・・・・・。

まず設定が面白いな思ったのですが、
展開していく物語の内容にだんだんと引き込まれていきました。
片方の世界にいるのは大学院生独身彼女ナシの男、
もう片方の世界にいるのは片親だった母を交通事故で無くし祖父母に引き取られた女子高生。
この2人の交流を介して、別世界にいる自分の存在を意識するようになっていきます。
過去の一点において違う判断、違う行動をしたからこそ生じた「今」の違い。
これって、自分の身に置き換えて想像すると、結構、怖いことですよね。
「今の自分」として存在する可能性があった範囲の中で、
まさにこの自分はどこに位置づけられるのだろうかと。

雪が降り積もる日々は限られているわけで、
異世界との交流も、あと少し・・・・・そうなってからの展開が、さらにグッとくるものがあり、
切なくも、前向きになれる終わり方が、素敵でした。

これまでの5つの短編の中で残された謎というか
深く語られないままだったエピソードについても、この作品の中で真相がわかり、
全てが落ち着いていくような感覚になった作品でした。

いやぁ、面白かった!

あとがきで、著者が、これは読者からの小説作品の投稿を、著者が改作するという企画だったと
種明かしがありましたが、そんな企画を全く知らずに読んで、普通に楽しめました。
むしろ、企画のことを先に知らなくてよかったなと。
それを知ったら、技術的な面というか、どこが元ネタでどこが乙一氏の味付けなのか
そっちばっかり気になってただろうなと思います。

普通に読んで、素直に面白い作品でした。


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