『最後の息子』
- 2018/06/11(Mon) -
吉田修一 『最後の息子』(文春文庫)、読了。

裏表紙に「とってもキュートな青春小説!」とあったので
軽い気持ちで手に取ったのですが、
表題作「最後の息子」は、仲間が死んだりして結構重たい内容でした。

主人公のプラプラしている男子は
新宿でオカマバーを経営しているオカマの閻魔ちゃんと同棲し、
オカマバーのお客さんとも知り合いながら、そんな日々をビデオカメラで撮っていく。
そのビデオの内容を見返していく主人公は・・・・・。

閻魔ちゃんはお店でも自分の家でも基本は明るいキャラなのに、
どこか無理をしているためか、ふとした切っ掛けで重たい本音が飛び出す。
そこに興味深い人生訓があるのですが、でも、閻魔ちゃんの立場を思うと悲しい。

オカマさんというキャラクターは、小説の中では、
世の中の表も裏も、酸いも甘いも、冷静な目で捉えている人物として
登場してくることが多く、そこから発せられる言葉たちに期待しているのですが、
その言葉の鋭さとは裏腹に、言葉を発した本人が深く傷ついているんだろうなという
思いを抱かずにはいられない悲しい境遇。

本作では、鋭さよりも悲しさの方が強く感じられて、
読み進めていくのが辛くなる感じでした。
それだけ良く描けているということだと思います。

そんな日々をビデオカメラで撮影された映像いよって辿っていくという演出により
余計に冷酷な印象を受けたのかもしれません。
悲しいけれど、良く描けた作品だと思います。

続く「破片」は、父親と兄弟の家族に影を投げる母親の死が、
重すぎて上手く読めませんでした。

最後の「Water」は、「やっと青春小説きたよ!」というぐらい、
ピチピチの青春でした。
高校の水泳部。個人競技では敵わないライバルがいるけど、
400mリレーでは絶対勝つ!という気持ちで臨んだ夏の物語。

家に帰れば、兄の事故死を受け入れられない母の姿や、
彼女に泣かれて困る自分や、酔った仲間に抱きつかれ同性愛の悩みに落ちたり、
いろんな人生が待っているのですが、それらを胸の奥に追いやってでも
追いかけたい青春がある!

プールでの出来事の爽やかさと、
プール外での出来事の深刻さとのバランスが
絶妙なところでコントロールされていて、凄い小説だと思いました。

吉田修一は、作品ごとに違った印象を与えてくれるので
次の作品が楽しみです。


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吉田 修一

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