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『シャイロックの子供たち』
- 2018/05/19(Sat) -
池井戸潤 『シャイロックの子供たち』(文春文庫)、読了。

第1話を読み終わり、第2話に入った時に、
主人公が変わったので、「あぁ、短編集なのね」と思って読んでいたら、
東京第一銀行長原支店という、下町の小さな支店が舞台だと分かり、
1つ1つのエピソードだけでなく、支店の人間関係なども複雑に絡まって来て、
後半になればなるほど面白さが積み重なってくる連作短編集でした。

冷静に考えれば、どんだけ問題児が集まってるんだ!?という支店ですが(苦笑)、
問題を抱えているのに、解決せずに蓋をする対応を続けていると、
一気に爆発するよ!という事例なのかも。

個人的には、第1話で主人公の副支店長の思考回路が
この問題支店を象徴しているように思えました。
危機的状況に直面しているのに、その本質を見抜けずに
的外れな解決策を自分の頭の中だけで思い描いてしまうという
ダメ上司ぶりを見せつけていますが、
防御に弱いモーレツ社員というのは、こんなものなのかもしれませんね。

この視点、女性行員さんが冷静な目と頭を持っていて
なかなか頼りになる感じです。

個人的には、西木という人物の立ち居振る舞いが気になりました。
最初に登場してきたときは、支店上層部から部下の女性行員に向けられた疑いの目を
強い態度で振り払う正義感を見せて、カッコいいなぁと思ったのですが、
その後の別のエピソードに登場してくる彼は、頼りなかったり、つかみどころがなかったり、
登場してくる場面ごとに印象が違ってきます。

そして、終盤には西木氏自身が事件に巻き込まれ、
さらにはどんでん返し的な真相の可能性も出てきて・・・・・・。
20人近く登場する長原支店の行員さんの中で、
一番興味深い人物でした。

一体、真相は何だったのか。
気にはなるけど、変なモヤモヤは残らないという、
著者の物語展開力がお見事な一冊でした。


シャイロックの子供たち (文春文庫)シャイロックの子供たち (文春文庫)
池井戸 潤

文藝春秋 2008-11-10
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