『人質の朗読会』
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- 2018/04/09(Mon) -
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小川洋子 『人質の朗読会』(中公文庫)、読了。
地球の裏側で開催された辺鄙な場所での観光遺跡バスツアー。 反政府ゲリラの襲撃を受け、日本人7名が人質となる・・・・。 サスペンスにも、スリルにも、アクションにもなりそうな設定なのに、 あえて「朗読会」という設定に持ち込む力技(笑)。 普通、そんな展開を考えないですわよ。 人質になってから数か月が経過し、 膠着した状況に退屈さを感じるようになった人質たちは、 時間つぶしに、自分の人生の一場面を切り取って みんなの前で披露するようになった・・・・。 冷静に考えると、いくら膠着状態でもゲリラの見張りがいる前で長文の文章を 書き残すなんてことが許されるのかしら?とか、 しかも針で地面に?とか、疑問は感じますが、 1つ1つの物語が面白いから、その辺の違和感はすぐに忘れてしまいました。 (総じて、ゲリラ側にリアリティがなかったということですかね) 子どもの頃、公園のブランコで出会った足を挫いた工員さん、 美味しくないビスケットを作る工場に通う私と嫌われ者の大家さん、 危機言語を救う友の会に迷い込んでしまった私、 どれも変な話なんですよ。 なのに、存在感が漂ってくるお話たち。 小川洋子、さすがです。 前半に自分語りをする人たちは、 なぜ、この地球の裏側のツアーに参加したのか、 直接語られていなくても、なんとなく想像できるような理由を背景に感じられて、 そこもまた上手いなぁと。 後半の人たちは、そこまで感じることができなかったので、 ちょっと物足りなかったかな。それとも、自分の読解力の問題でしょうか。 いずれにしても、小川洋子作品は、すごいです。
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