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『言ってはいけない』
- 2018/01/17(Wed) -
橘玲 『言ってはいけない』(新潮新書)、読了。

前回読んだ著者の本は、得々情報満載のものだったのですが、
本作は一転して、タブーに挑戦しています。

それは、「遺伝」。

親子アスリートの活躍などを見て、「偉大な遺伝子を受け継いだ」なんて表現しますが
遺伝について軽々と口にできるのは良い部分の遺伝の話であって、
当然、悪い部分も遺伝するのに、そこは触れにくい・・・・・。

知能、経済力、犯罪性、美貌、人種などの遺伝の本当のところ、
語りにくいところにズブズブ手を入れていっています。

誰も話したがらない内容を、あえて取り上げて、
しかも(意図的、演出的に)強めの言葉で煽りながら論述するという
炎上狙いな感もありますが、
「こういう問題もちゃんと考えろよ!」という投げかけの心意気は良し。

遺伝とか、人種とか、犯罪者の血とか、そういう問題って気を使いますよね。
今の世の中、ちょっと目立つことを言ったら袋叩きにされそうです。
で、結局、臭いものに蓋のような感じで、怖いテーマは語らない、考えないという風潮。

本当のところを分かったうえで、配慮して会話に乗せないということと、
良く分からないけど炎上が怖いから何も考えないようにするというのでは、
雲泥の差です。

では、本作では本当のところが語られているのかという部分ですが、
正直、私には評価できかねる論述でした。
生じた現象が遺伝によるものなのか、環境からの影響によるものなのか
医療実験や心理実験で検証されているのだとは思いますが、
その実験結果の分析の難しさなのか、
本作では実験した内容と、そこから分析された結果のみが語られており、
分析手法や分析プロセスについてはあまり述べられていません。
なので、分析結果が正しいのか誤っているのか
読んでみた心象に頼らざるを得ず、結局、自分の中に蓄積している既存の概念で
評価・判断してしまうことに。

そのため、読んでみた結果、あんまり衝撃の事実が心に残らなかったというか、
既に自分がそうだろうなと思っていることはすんなり読めましたし、
「えぇ、それホント!?」と疑ってしまった部分については、
結局、その感想を改めるほどの材料が提供されないから
拒否反応が残って終わりという結果に。

書いてあることを素直に読んで素直に信じられる人にとっては、
衝撃の事実が次々と出てくる怖い本になるのかもしれませんが、
私のような素直に読めない人にとっては、
半信半疑な感覚が残ってしまいました。

ま、でも、こういう視点を世の中に提起したのは大事なことかなと思います。

ただ、「バカな親からは遺伝してバカな子供が生まれる」とか言っちゃうと、
教育という社会規範が効力を持たなくなってしまい、
社会が乱れてしまうというか、秩序が崩壊してしまいそうなので、
社会の構成員全員がこの手のことを知ってしまうとよろしくないのかなぁ・・・・。
こういう考え方をすること自体、エリート意識、優生主義とか批判されそうですね。
うーん、難しい。


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