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『希望難民ご一行様』
- 2017/11/15(Wed) -
古市憲寿 『希望難民ご一行様』(光文社新書)、読了。

面白かったです。

街角のあちこちにポスターが貼られているピースボート。
その内情について、実際に著者が乗船して描いたルポ。

実は、私の同級生に、ピースボートに乗った人が居ます。
「乗るんだ」という話を聞いたときに、「えぅ、あんな左翼の船に!?」と驚きました。
左翼の集団の中に閉じ込められる数か月というイメージがあったので、
洗脳されてしまわないだろうか・・・・・と不安に思った記憶があります。

そう、私の世代は、高校生の時にオウム事件があり、
大学入学時に、政治組織と併せて、カルト組織に誤って足を踏み入れてしまわないように
という注意喚起が行われていた頃でした。
なので、つい、「洗脳」というフレーズが頭をよぎってしまうのです。

そんな偏ったイメージを持っていたピースボートですが、
本作を読んで、思っていたほど政治がかっていないことに、逆に驚きました。
イマドキの・・・・・ということなのでしょうか。
「9条ダンス」とかいう発想は、確かに斜め上を行ってる感じですが、
でも、ゴリゴリの左翼感は感じませんでした。

私のピースボートのイメージの根源は、
創設メンバーの辻元清美氏、水先案内人の鎌田慧氏や、本多勝一氏といった
名前から来るところが大きいです。
逃げ場のない船上で、こんな人たちの思想を叩き込まれるのではないかと。

でも、本作を読んで、あっけらかんとした若者が多いのに驚きました。
あまり思想とか意識しておらず、しかも乗船後もあまり意識に変化がないという点で、
逆に「大丈夫か!?」と思ってしまうほどののんきさ。

そして、高齢者の乗船もそれなりの割合を占めるという事実も衝撃でしたし、
その中の声として「こんな左翼の船だったとは思わなかった」と憤激しているコメントを読んで、
「なんで乗船前に気づけないんだ!?」と、これまた衝撃でした。
(そういえば、本作内で、水先案内人に関する描写がなかったのは残念)

ゴリゴリ左翼は乗っていなくて、
乗船中に左翼に目覚める人もあまりいなくて、
結局、世界一周パッケージ旅行をオンボロ船で行っているというだけ?

事業モデルとしては、非常に興味深いものでした。
ボランティアスタッフを囲い込む方法を練り上げており、
街頭ポスター貼りなどの営業活動を上手く組み込んでおり、
乗船中も客に自分たちでイベントの企画・運営をやらせるという周到さ。
ビジネスマンとしては非常に優秀だと思います。
運営しているのが左翼なのが残念!

著者の分析に関して言うと、
ピースボートという舞台の上で、社会学の様々な概念を解説してくれて
面白おかしく読みながら、勉強になりました。

硬い論文の紹介を、
絶妙なバランスでおちゃらけた文章に乗せているので笑いながら読めて、
しかも、ピースボートという特殊な事業モデル、
生活空間の様子を知ることができ、興味深かったです。


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