『鞄に本だけつめこんで』
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- 2017/10/29(Sun) -
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群ようこ 『鞄に本だけつめこんで』(新潮文庫)、読了。
エッセイ風ブックガイド。 文学少女だったという著者の紹介する本は、 古典や名作と呼ばれる作品が多く、少々敷居が高かったりしますが、 本の紹介が始まる前の、文学少女だった子供時代を振り返るくだりが 何とも面白いエッセイになっています。 そもそも、父親が売れない画家で仕事をしなかったことや、 母親が代わりに家計を支えていたこと、 著者自身は子供の頃から結婚したくないという思いを強く持っていたこと、 弟は女の子が好むような遊びが好きだったこと、 ちょっと変わった家族の姿が描かれています。 ガキ大将のような小学生時代を過ごしたのに、 中学校で周りの子どもたちが色気づき始めると、 それに影響されて髪の毛のスタイリングをしてみたり、 母の口紅を黙って借りてお化粧をしてみたり、 女の子らしいことにもチャレンジしようとします。 でも、必ず大きな失敗をして、すぐにガキ大将生活に戻っちゃいます。 このあたりの、子供心の描写が上手いです。 そして、働かない父や、そんな父と離婚しない母にいら立ちを覚えながらも、 でも、一緒に住む家族としての日々があり、 そこは案外良い思い出としてエッセイに書けるのも 著者が、その家族の様子を客観的に眺める視点を持っていたからなのかなと思います。 あと、弟が入院した時に著者が感じた弟への思いは、すごく共感できました。 生まれたときからずっと見ているので、成長の過程を知っている、 そこから湧き上がる親愛の情について、素直に書かれており、 本当にそうだなと、自分の弟のことを思いながら読みました。 視点と文才、両方を楽しめる良いエッセイです。
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