『ぐるぐる七福神』
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- 2017/10/22(Sun) -
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中島たい子 『ぐるぐる七福神』(幻冬舎文庫)、読了。
漢方小説、月経小説ときて、今度は七福神小説。 いや~ぁ、微妙なところを突いてきますねぇ。 恋人なし、趣味なし、仕事のやる気なしのアラサー派遣社員のぞみは、 たまたま祖母の部屋のゴミの片づけをした際に見つけた 谷中七福神巡りの御朱印帖に1つ空欄があることに気づき、 なんとなく七福神巡りを始めてしまう・・・・・。 というような要約だと、暇なアラサー女子の日常小説のようですが、 私的ポイントは、このやる気なし派遣社員が、実は活動家上がりなこと。 大学生の時に食品添加物の害を声高に叫んだり、 食品加工場に潜入調査をする過激な反対活動をしたり 地球と人間に優しい農業をするんだと息巻いたり、 とにかく目に付くものに反対して自己主張をするものの どれも中途半端に失敗して新たな活動の場に逃げ込むという 典型的な活動家の右往左往を経験していて、 挙句の果てに30歳を過ぎたところで燃え尽き症候群。 この主人公のバックボーンが興味深くて、小説の世界にのめり込んでしまいました。 御朱印帖に空欄があるのに気付いたのに放置したら祖母の病態に障るかも、 大学の時の元カレが死んだのは自分の心無い一言が原因だ、 会社の隣の席の人が私を真似て魔法瓶を買ったら悪いことが起きるかも、 何でも自分に責任があると思い込んで、動けなくなってしまった主人公。 あなたの活動家実績が世の中に影響を与えなかったのと同じように、 あなたの日常の行動も、そんな影響力無いですよ・・・・・と言ってあげたくなります。 でも、それだけの影響力が自分にあると思い込んでしまう、 それはもう、活動家病ですね。 そんな偏屈な主人公が、自発的にではなく、 半ば心情的に強制されたような状態で巡っていく七福神たち。 都内には様々な七福神巡りコースがあり、 私も部分的にお参りしたことがあります。 基本的に小さな寺社が多い印象ですが、 そのこじんまり感が、この小説のテイストにぴったりな気がします。 日常のほんの延長線上にいる七福神たちが、 主人公に、冷静になれ、周りを見ろ、友人たちにヘルプを出せと言っているようで、 段々と心が落ち着いていく様子が見てとれます。 これこそ神のご加護ですね。 落ち着くところに落ち着いた感じの結末も心地よかったです。 中島たい子作品、どれも面白いわぁ。
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