『海賊とよばれた男』
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- 2017/10/07(Sat) -
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百田尚樹 『海賊とよばれた男』(講談社文庫)、読了。
大ヒット本。 分厚い上下二巻本で積読状態だったのですが、 東京出張で移動時間がたくさんあったので挑戦してみました。 出光興産の出光佐三がモデルですが、 ここまでユニークで強烈な経営者だったとは知りませんでした。 石油と言えば、エネルギー業界の王様であり、 それが原因で世界経済が歪んだり、戦争が起きたり、 とにかく国家レベルで向き合う事業だという認識です。 そんな中、一企業・・・・・というか一民間商店が、 自分の力だけで事業をやっていこうとする、凄まじいエネルギーの物語でした。 大正時代の話なら分かりますよ。 どれだけ将来性があるか見えていないオイル製品を 山師のような商人が手を付けようとするのは。 ところが佐三は、戦後の時代において、 GHQや日本政府、石油業界団体を敵に回してでも 独立独歩で行こうとするのですから、この信念には魂消ました。 昔、出光興産やそのグループ会社の方々と仕事を一緒にしたことがあるのですが、 非常に情熱的だし、お客様第一という姿勢が骨身に沁みついているという印象でした。 社員教育のレベルというよりも、信念が合う人を採用しているというイメージです。 そんな社員がなぜ生まれるのか、その理由が本作に詰まっていると感じました。 冷静に考えたら、「それは役員会でストップかけなさいよ!」というような 非常識な経営判断がどんどん繰り出されるのですが、 個人商店が大きくなってしまったという出光では、店主の声が神の声。 落ちてきた命令に対しては、「どうやって実現するかを考え行動する」という 選択肢しか残っていません。 これで社員がついてくるのですから、佐三個人の人間性がいかほどのものだったのか 想像が追い付かないぐらいです。 本作では、あまりに佐三がかっこよく書かれ過ぎて、 その働かせ方はいくら何でも酷いだろうとか、 その命令は理不尽過ぎるだろうとか、 マイナス印象の経営判断や事故については書かなかったんじゃないだろうかとか いろいろ思ってしまう面もありましたが、 ま、これは、一人のヒーローの物語ということで、 最後まで気持ちよく読めるのもアリかなと思えました。 そして、彼のような存在を支えられたのは、熱い思いの従業員が多数いたから。 戦後10年ほどで、どんどん大きくなっていく様子には、 トップ1人の力ではどうにもならない凄まじいエネルギーを感じました。 結局、これって、戦前からの教育の蓄積により、ちゃんと人材が育っていたからなのかなと。 世界中の戦争後の混乱状態を思うにつけ、 日本がこれだけ急激に復活できたのは、やはり教育の力のように思いました。 現在は、昭シェルとの合併話で創業家と揉め揉めしてますが、 こういう出自の企業なら、アイデンティティを失うような話になるので、 そりゃ創業家は止めに入りますわなぁ。 どのような結末になるか、見ものですね。
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