『沖で待つ』
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- 2017/09/24(Sun) -
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絲山秋子 『沖で待つ』(文春文庫)、読了。
芥川賞受賞の表題作を収めた短編集。 冒頭の「勤労感謝の日」。 上司への暴力事件で職を失った36歳の女が主人公。 近所の世話焼きおばさんに言われてお見合いをする羽目に。 そこにやってきたのは、デリカシーの無い発言をぶっこんでくる男。 本音がはじける女の内面が面白い作品。 言葉選びが絶妙です。 続いて、「沖で待つ」。 わたくし、タイトルの印象から、情緒的な話だとばかり思ってました。 ふたを開けてみれば、住宅設備機器メーカーで働く女性総合職と 同期の男性との今どきの友情物語のような話でした。 お仕事物語としても、住宅設備機器という馴染みのない業界の話が新鮮で、 また、均等法入社の女性総合職と男性総合職の友情という キラキラした感じの爽やかな人間関係があり、 でも、この友情の相手の男性はすでに亡くなっているという悲しい過去。 そういった様々な要素をないまぜにしながら、 これまた絶妙な匙加減の言葉で女性の内面を綴っていきます。 結構重たいエピソードも、カラッとした言葉で語られており、 しかし軽くもないので、しっかりと読ませてくれます。 良い作品でした。 そして最後は「みなみのしまのぶんたろう」。 これまた異色の作品。 主人公は、作家で政治家の「しいはらぶんたろう」。 どこかで聞いたことがあるような名前・・・・・(笑)。 かなり皮肉った書き方をしているので、 ここまで書いちゃって大丈夫なのかしら?と心配になるほど。 前2作と違って、この作品では匙加減が私好みではなく、 某氏のことがそんなに憎いのかな・・・・と思ってしまうほど。 ただ、前半の皮肉っぽさと打って変わって、 後半ではイルカと会話したり、魚たちとショーを企画したり、 とってもファンタジーなおじさんに変身していきます。 魂の再生の物語だったのかな。 とにかく、著者の作品をもっと読んでいこうと誓った一冊となりました。
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