『誰かが足りない』
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- 2017/06/04(Sun) -
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宮下奈都 『誰かが足りない』(双葉文庫)。
とある町の駅前ロータリーにちょこんとあるレストラン「ハライ」。 予約を取ることが難しい人気店。 ある夜に、各テーブルを陣取ったグループのそれぞれの背景を描いていきます。 最初の予約客について描いた短編が、 ほぼ主人公の心理描写のみで進んでいき、これは読みづらかったです。 物語の世界に入っていきにくいと言いますか、 自分しか見えていない感じの息苦しさと言いますか。 こんな調子で全編語られていくんだったら辛いなぁ・・・・と思ってしまいましたが、 2組目の予約客の話は主人公以外の人物も登場してきたので だいぶ読みやすくなりました。挫折してしまわなくてよかったです。 個人的に興味深かったのは、4組目のお客さん。 子供の頃に母から聞かされた告白がトラウマとなり、 他人と面と向き合って会話ができなくなってしまった主人公の男。 今は、ビデオカメラを持ち歩き、そのファインダーを通して他人と会話しています。 その行動を「変な人」として表現するのではなく、 こういう過去があったなら、こんな行動を取らざるを得なくなってしまったのは納得・・・・ と思わせる描写でした。 そして、そんな自分の「変な行動」を「変だ」と薄々自覚しはじめ、 「治せないだろうか」と葛藤する主人公の姿を 妹やその友人との関わりの中で丁寧に描いています。 お互いに無理をするのではなく、また無理を強いるのではなく、 自発的に自分を変えようと思えるようになるまで見守る姿、 その温かさが印象に残りました。 最後まで、その具体的な様子は描写されないレストラン「ハライ」も きっと、こんな温かさに満ち溢れているのでしょうね。
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