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『ベトナム怪人紀行』
- 2017/04/27(Thu) -
ゲッツ板谷 『ベトナム怪人紀行』(角川文庫)、読了。

サイバラ女史の作品に時々「金角」として登場してくる著者。
作品を読むのは初めてです。

本作は、著者とカメラマンの鴨志田さんと現地ガイドの鈴木さんの3人組が
ベトナムを縦横無尽に取材して回る旅行記。
2年前のベトナム訪問で「敗北」したからリベンジ!ということですが、
なんでベトナムを動き回っているのか、その目的というか、大義名分が
イマイチ伝わってこなくて、何を軸に読んだらよいのか分かりづらかったです。

例えば、全国の巨大仏を見て回る!とか
アマゾンでトクナレを釣る!とか
アジアの変な施設を見て回る!とか、
何かしら企画趣旨があると見やすいんですよね。
そこから派生する比較文化論だったり、人間観察だったり、自己分析だったりが面白いわけで。

2年前のベトナム訪問記を読んで、「敗北」の内容を理解すれば
今回の訪問意図も分かるのかもしれませんが、それは1冊の作品で完結してほしいところ。

あっちこっちの見て回る先を選ぶ理由が、「なんか面白そう」というフワッとしたものなので
なんでそこに行くのか読んでいて分からず、出てきた感想も場当たり的に思ってしまいます。

ベトナム戦争についての思いも書かれていますが、取って付けた感があり、表面的です。
今回のベトナム訪問まで、ベトナム戦争のことをほとんど知らなかったと書いていますが、
では、知ったからと言って、あえて作品に書き残すほどの感想だったのかなぁ・・・・・という印象です。

そして、他の旅行記との違いは、そういう重たい話と、くだらない軽い話とを繋ぐというか、
転換する作家としての技術が、低いように感じました。
重い話からいきなり軽い話へ、または、その反対になるときに、
脳内転換を上手く表現できていないので、重たい話への思いが表面的に見えてしまうのではないかと。

だから、著者のベトナム戦争に対する感想が軽いわけでも、
今回初めてベトナム戦争を知ったときに著者が受けた衝撃が小さいわけではなく、
それを表現する作家としての技術が追い付いていないのではないかと思いました。

体験は面白いものだったと思うのですが、
本の構成的にも、文章の表現的にも、
読者に十分に伝えられていないような気がして、残念です。


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ゲッツ板谷 西原 理恵子

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