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『立花隆秘書日記』
- 2017/04/23(Sun) -
佐々木千賀子 『立花隆秘書日記』(ポプラ社)、読了。

先日読んだ本に、立花隆氏が秘書さんに向かう態度について
批判的に書かれていたのが印象に残ったのですが、
たまたまブックオフで、件の秘書さんの著作を見つけたので即買い。

立花隆氏の秘書になったところから話が始まるのかと思いきや、
その前の職が途切れ、無職になったところからスタートしました。
というわけで、立花隆氏のみを語るのではなく、
結構、著者自身が前面に出てくる内容でした。

新聞で秘書募集の広告を見つけ、応募した著者。
その一風変わった、しかし目的が明確な面接試験を順次パスしていき、
めでたく秘書業につきます。
この顛末は、立花隆氏側でも文章になっています

しかし、秘書という仕事の実態は、
資料取集や整理、原稿取りの電話応対、クレーム電話の処理など
体力仕事から根気仕事まで、大変そうです。
ただ、縁の下の力持ち的な仕事であっても、
自分が関った作品が世に出たときには嬉しいでしょうね。
やりがいが感じられる仕事かと思います。

著者が秘書を務めていた時代は、
阪神大震災、地下鉄サリン事件、オウム真理教の強制捜査という一連の出来事を含み、
まさに強烈な瞬間最大風速が立て続けに吹いたときでした。

そんな時間を、立花隆氏の隣で経験したというのは、
他では得られない貴重なものだと思い、ある種の羨ましさを覚えました。
そして、読んでいて、立花隆氏の周囲にある緊迫した空気が伝わってくるので、
時代の記録本として良い作品になっていると思います。

東大のゼミや講義も全て記録員として聞いていたようで、
学生との対話の中身を全て知ることができるというのは、羨ましいです。

そんな著者ですが、立花隆氏の知性を尊敬する一方で、
物書きとしての立花隆には途中で熱が冷めていったような印象です。
『臨死体験』の最終章で、「臨死体験」現象に対する自分なりの判断を示さずに、
曖昧な表現で逃げたことに、この本で文章にして表現している以上に、
本心では幻滅してしまったのではないでしょうか。

自分が知らないことを学び、集め、暴き、それを披露する立花隆というジャーナリスト。
そこに、さらに意見・判断を求めてしまったがために、
物足りなさを感じるようになってしまったのではないでしょうか。

そして、そういう土壌が出来上がっていたところに、
「秘書に給料を払わなくてはならない(ことが嫌だ)」という週刊誌上の発言が
決別スイッチのボタンを押してしまったという感じでしょうかね。
この発言については、先の本でも糾弾されている次第です。

結局、立花隆氏は、秘書に仕事の支援を期待していたのではなく、
ただ単に、秘書というものを置いてみたかっただけなのだという、
非常に冷たい分析で終わっています。

冒頭からページの95%までは、立花隆氏への尊敬の念が込められた文章でしたが、
最後の5%のところで、全てを捨ててしまうかのような冷たい決別で終わっており、
その熱量のギャップに驚きます。
もっと何か理由があったのではないかと勘ぐってしまいたくなるほど。

できる人が2人で仕事をすると、
必ずしも上手く回るわけではないという事例なのかもしれませんね。


立花隆秘書日記立花隆秘書日記
佐々木 千賀子

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