『そうか、もう君はいないのか』
- 2017/04/26(Wed) -
城山三郎 『そうか、もう君はいないのか』(新潮社)、読了。

経済小説の帝王・城山三郎氏が描いた
経済世界とは切り離された私的な世界のお話。

思いのほかストレートに奥様への愛情を綴っており、
城山三郎氏の意外な一面を知ったように感じました。

出会いの場面から、奥様となる女性のことを「妖精」と表現しており、
また、一度は離れたものの、思わぬ再開をするあたりなど、
その運命について当の本人が最も神聖さを感じているようで、
行間から伝わるどころか、文章そのものが表現しきっています。

その分、奥様が病に倒れたところからは、
どれだけ辛く悲しい思いをしたのか、こちらが想像し尽せない程だったのではないかと
終盤の展開は読んでいて辛かったです。

しかし、一番涙を誘ったのは、
本編の後に収録された次女による、この夫婦の最後の生活の日々の描写です。
著者自身の筆は、キツイ言い方をするなら、奥様の病状を描いている場面では、
筆が鈍っているというか、少々ウツ状態で書いていたのではないかと思ってしまいました。

しかし、次女の方は、母親の病状や父親の打ちひしがれる姿、
そして両親の間で交わされる最後の日々での労わり合い、
これらを冷静に見つめ、その当時に必要な手当てをし、
そして今になって冷静に振り返っているという印象です。

この冷静さが、却って涙を誘います。

城山三郎氏の、熱い企業小説・経済小説は大好きですが、
その作品を生み出す過程を陰で支えていた奥様の姿に、感銘を受けました。
今後、城山作品を読むときには、奥様の姿も頭に思い浮かんでくることでしょう。

まさに、運命のベストパートナーですね。


そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)
城山 三郎

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