『排除の空気に唾を吐け』
- 2017/04/08(Sat) -
雨宮処凛 『排除の空気に唾を吐け』(講談社現代新書)、読了。

たぶん、私とは考え方が違うんだろうなぁ・・・・・・と思いながらも
後学のために買ってみました。

「派遣切り」「年越し派遣村」がニュースに溢れていた頃に書かれた本。
企業に都合の良いように使い捨てられる派遣社員、
生活費を稼ぐことも子どもの育児もひとりで背負っているシングルマザー、
病気で思うように働けないのに生活保護をもらえない人々、
そんな社会の底辺で右往左往する人々の姿を描いていきます。

・・・・・が、私の最初の印象は、いろんな立場の人を「弱者」という概念で
一緒くたにし過ぎなのではないかという懸念。
「弱者」が力を合わせるというのは、社会に存在を認識してもらうために
声を上げるときには有効かもしれませんが、
処方箋を書こうとすると、この連携は混乱するだけな気がします。
しかも、どの問題から取り組むべきかという優先順位付けにおいては
足の引っ張り合いみたいにならないかなぁと心配。
というように、私の感想は、他人事のようで冷たいものとなってしまいました。

特に引いてしまったのは、熊本KYメーデーの紹介の中で書かれていた
「よわいもの」たちとは、非正規労働者、ニート、引きこもり、・・・・と続いて、
突然、農民、漁民と出てくるくだり。その後、野宿者、障碍者と続いていくのですが、
正直なところ、農業や漁業に従事する人々は、この羅列の中に自分の職業が
登場してくることを知ったときに、激怒するのではないかと思いました。

歴史ある仕事だし、なにより正業だし、人間社会を支える重要な仕事です。
社畜のように飼われているのでもなく、非正規雇用のようにむしり取られるわけでもない。
確かに、収入金額としてはサラリーマンより低くて、年によって不安定かもしれませんが、
しかし、やっぱり、この文脈で語るのには抵抗を覚えます。

本作では、様々な「弱者」の実態が紹介されていますが、
いったい著者は、何をもって「弱者」と考えているのか、
それは経済的貧しさだけしか尺度がないのか、
よくわかりませんでした。

そこがぼんやりしているので、
いったい著者が何を訴えようとしているのか、伝わってきませんでした。
それは、どんな日本になることを著者が期待しているのかが
見えてこなかったということでもあります。

「弱者」が、他の「弱者」の様子を知ることで連帯して声を上げた結果が、
派遣村や熊本KYメーデーの暴発したような姿だとしたら、
彼らの活動を通して社会が改善されていく可能性は乏しいのではないかと
これまた冷たく思ってしまいました。

結局は、アベノミクスにより、派遣村問題のようなことは
一般社会で意識されることはなくなったのですから・・・・・(解決されたかは別ですよ)。

本作で描かれたような「弱者」の救済には、
結局は、政府をあげての景気回復政策が特効薬のような気がしました。
根本的解決にはならないですが、対処療法としては効くのではないかと。
対処療法で症状が軽くなった時に、抜本的な改革策を
これまた政府主導で実行していくのが、良いのではないかと、
官僚的思考をしがちな私の結論となりました。


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