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『小さいおうち』
- 2017/01/29(Sun) -
中島京子 『小さいおうち』(文春文庫)、読了。

直木賞受賞作だけあって、非常に面白かったです。
物語の展開がどうかということよりも、
戦前~戦中の日本社会のありようを、
セレブ一家の女中の目を通して語っていくという視点が興味深かったです。

日本の近現代史を学んだ今の若い人からすれば、
中国に侵略したり、太平洋の国々に侵略したり、後に陥落したりというので、
その頃の日本は真っ暗な生活を送っていたように思ってしまいますが、
本作で語られているのは、それなりに楽しく日々の生活を過ごす日本人の姿です。

主人公が勤める一家の主の仕事が、玩具メーカーということで、
戦争関連の玩具を出せば、戦争景気に乗っかれたという利点はあったでしょうが、
それにしても、日々の生活は、私たちの想像を超えて穏やかです。

そんな現代人とのギャップを体現する人物として、
甥御を作中に登場させており、読者が置いてきぼりにならないようにする
役目を担わせているのもサスガ、上手いです。

よくよく思い出してみれば、我が家の曽々祖父は、
昭和17年に木造3階建ての豪邸を建て(当時はちょっとお金のある家だったんです)、
町の中で一番目立つ建物だったようなのですが、
昭和20年の大空襲で見事に焼け落ちたそうで・・・・・。

今の人の感覚からすれば、あの戦争中に家を建てるなんて!
と思っちゃいますが、当時の人の感覚からすれば、
戦争景気に乗っかった投資だったんでしょうね。
ま、我が家の中では、黒歴史になっており、
曽々祖父、曽祖父の代は、曽々祖母、曽祖母の名前で呼ばれています(爆)。

と、つらつらと、いろんなことを思いながら読める、
頭の中に世界が広がっていく本でした。

裏表紙には「最終章が深い余韻を残す傑作」とありましたが、
私は、そこまで最終章に感動はなかったです。
昭和という時代が、それだけしっかりと描かれていたということなんだと思います。


小さいおうち (文春文庫)小さいおうち (文春文庫)
中島 京子

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