『夕日よ止まれ』
- 2016/12/05(Mon) -
胡桃沢耕史 『夕日よ止まれ』(徳間文庫)、読了。

男装の麗人・川島芳子の生涯を描いた一冊。

本作を読むまで、この人物について認識していませんでした。
しかし、読んだ後でも、本当にこんな人物がいたのだろうか・・・・・
本当に戦争の火付け役や火消し役として活動していたのだろうか・・・・・
という思いが抜けませんでした。

それほど、この人物の存在感が異様というか、
少年向けのスパイ小説の世界の話のような感覚に陥ります。

清国の滅亡で、ぞの皇族たちが路頭に迷ったことや
大陸浪人と呼ばれる山っ気のある日本人たちがそこに群がったこと、
そこから娘を日本に送ろうと思うこと、
この辺りまでは普通の頭で理解できるのですが、
日本に連れてきて、娘を男として育てる、僕と自称させる、
このあたりから分からなくなります。
スパイなら女性として機能する役割もあったはず。
なのに、あえて男に見せるようにするとは・・・・・。

まぁ、普通の感覚の人は大陸浪人にはなろうとしないでしょうし、
滅亡した国の皇女であれば、普通に生きていこうとすれば死を求められる恐れあるわけで、
こういう風に生きるしかなかったということなのでしょう。

そして、幼いころから、風変わりな役割を課せられてきた芳子は、
あえて自分から、その役割の中に飛び込んでいくことで、
自分自身を得ることができたというか、芳子像を作り上げることに
自らが酔ってしまった感があります。
ただ、自己像の創出という行為が、ここまでの規模で徹底できるのは、
この人の行動力と判断力の賜物ですね。

日本陸軍の中佐と愛人関係になり、
2人で上海事変を引き起こしたというようなくだりは、
本当に、そこまでのことを、たった2人で行えたのかというようなところは疑問でした。
芳子は自分たちの功績だ思っていたのかもしれませんが、
本当は、裏でもっと組織的に動いていたのではないかと。
でも、日本陸軍の統制のとれなさというか、個人の独断専行の行動を許してしまう風土は
戦争のどの瞬間にもあったようにも思うので、あり得る話なのかなぁ。

川島芳子という、教科書には登場してこないような人物の生涯記録としては
興味深い作品でしたが、小説としては、もっと大局的な日本の戦争観や戦況と対比して
この人物が置かれた状況と与えた影響を書き込んでほしかったなと思います。
ちょっと人物に寄りすぎて、話が小さくまとまってしまった印象です。


夕日よ止まれ夕日よ止まれ
胡桃沢 耕史

徳間書店 1989-07
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