『赤目四十八瀧心中未遂』
- 2016/09/22(Thu) -
車谷長吉 『赤目四十八瀧心中未遂』(文春文庫)、読了。

直木賞を受賞したとき、「あ、三重県が舞台だ!」と印象に残りました。
が、「心中」と来ると、そのような情念世界が苦手なため、
作品として手に取ることをためらっていました。

その後、映画がヒットした時も、
なんだか情念ドロドロな画面の感じが苦手で、見ずじまい。

ようやく、今回、100円で見つけたタイミングで読んでみました。

まず驚いたのは、文章のリズム感の心地よさ。
独特な漢字表現と相まって、濃い日本語の世界に浸ることができます。

一方で、大阪の底辺部の世界をのぞき込んでいるという怖さ。
リズムは心地よいけれども、これ以上読み進めたら、
突然真っ暗な闇が広がっているのではないかと思えてしまう世界観。

部屋にこもって焼き鳥のモツの仕込みをし続ける主人公の狭い視野の範囲で
物語が語られていくため、劇的な事件が目の前で起きることはなく、
その変化の乏しい日々が、これまた、いつか世界が爆破するのではないかという
ドキドキ感が増幅していきます。

終盤、パタパタっと世界が動いていき、
いつのまにか赤目口に降り立った主人公とアヤ。
尼崎から赤目までの一気に世界が動ていく感覚から一転して、
赤目四十八滝を歩く2人の穏やかな感覚。

昔、赤目四十八滝には遊びに行ったことがあるのですが
その清涼感は素晴らしものでした。
尼崎で体にまとわりつき、こびりついた泥を落とすことができそうな
それほどの清々しさを感じる滝々の道です。

最後、この終わり方は、様々な展開の想像を可能にするものだと思いますが、
冷静に考えると暗い展開が待ち受けていると思われるのに
なんだか読んだ印象は明るい光を感じるものでした。

この光は何だったのでしょうか。

これも、深い森にある赤目の滝が与えてくれた光なのでしょうか。



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車谷 長吉

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