『星に願いを』
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- 2016/08/26(Fri) -
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重松清 『星に願いを』(新潮文庫)、読了。
1995年から2000年までの6年間を、 3つの家族の姿を通して映し出した作品。 時事ネタがふんだんに盛り込まれており、 しかも、ストーリーに絡めるのではなく、 あくまで当時のニュースとして断片的に突っ込んでくることで、 その時事性が際立っています。 主要登場人物は3人。 定年が見えてきたアサダ氏、 幼い娘の一つ一つの行動が心配でならないヤマグチさん、 自分の進路がまったく見えてこない高校生のタカユキ。 タカユキと私は、1学年違うぐらいのほぼ同世代の年齢設定。 タカユキが経験した世界は、私が経験した世界でもあります。 阪神大震災、サリン事件、たまごっち、・・・・・。 思いもよらない出来事の前に、自分はどうしたらよいのか 分からなくなってしまう感覚。 とにかく静観した私と、ボランティア活動に参加したタカユキ。 同じように周りが見えていなくても、行動できた者と行動しなかった者は、 その出来事が人生にもたらす意味合いの重さが全く異なるんだろうなぁと タカユキの行動力が羨ましかったです。 さて、物語の方ですが、 3つの家族を通して、この年代の日本を写し取るということには 同時代を生きた者なら、ある程度成功していると感じるでしょうが、 しかし、小説として面白かったかと言われると・・・・・うーん。 まず、3つの世界が独立して展開していくのに、 しょっちゅう切り替わるので、読んでいて落ち着きません。 そして、アサダ氏、ヤマグチさん、タカユキという呼称も、 他の家族が下の名前で、しかも漢字表記で書かれている中で、 何だか変に浮き上がってしまっていて、文章として読みづらかったです。 実験的な作品だとは思いますが、 実験には形式的には一定成功しても、結果が伴わなかった印象です。
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