『母性』
- 2016/08/02(Tue) -
湊かなえ 『母性』(新潮文庫)、読了。

母と娘の回想が交互に描かれ、
この2人の関係性の変化が時系列で示されていくのですが、
それぞれの視点から見た同じ出来事が、全く違うように解釈されており
あぁ、歴史って、個人でも国家でも、それぞれの立場で全く異なるように
構成されていくんだなということがまざまざと示されています。

特に私は、両親や祖父母を中心とする大人たちの目を気にする子供という
物語設定に非常に関心があるため、本作でも「娘」の視点から描かれた
世界を軸に、いかに「母」と異なる解釈をしているのかという部分を読みました。

「母」は、自分の母から多くの愛情を注ぎこまれ、
母がすべてというような人生を送ってきた、いわゆるマザコン娘。
そんなマザコン娘が自分の娘を持つようになりますが、
娘に愛情を注ぐのではなく、娘に愛情を注ぐ自分を母から褒めてもらいたいという
屈折した愛を「娘」に向けるようになります。
「娘」は、歪んだ愛情であることに感覚的に気づきながらも、
なぜなのかを理解できずに、「母」を畏怖するようになります。

そして、運命の台風の日・・・・・。

舞台装置はばっちりだったのですが、
物語にイマイチ乗り切れない部分があったのは確か。

それはたぶん、最初に「娘」の回想を読んだときに、
すでに「娘」がそのキャラクターを確立してしまっていたことにあると思います。
なぜこの「娘」がこの「母」の下で育ってしまったのか?という究極の点が、
読者が頭の中で想像するしかなかったので、
「そここそを読みたかったのに!」という思いになってしまったのです。

なぜ、「娘」は「母」を恐れるようになったのか、避けるようになったのか、
回想が始まった時点で、すでにそういう行動が当然のようになってしまっているので、
そのような行動が始まった本質的なきっかけを読んでみたかったです。

それでも、「娘」の成長を通して、埋められない「母」と「娘」の距離を
まざまざと見せつけられる作品であり、恐ろしかったです。
独白という形式を、ここまで嫌な感じに描ける著者は、やはり凄いです。


母性 (新潮文庫)母性 (新潮文庫)
湊 かなえ

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