『ユージニア』
- 2016/05/19(Thu) -
恩田陸 『ユージニア』(角川文庫)、読了。

恩田作品の禍々しさが存分に味わえる一冊です。

とある地方都市の裕福な医者一家を襲った毒入りジュース事件。
一家の大半と、遊びに来ていた近所の人たち十数人が死亡するという凄惨な事件に。
犯人を追う手掛かりは少なく数年が過ぎたとき、1人の自殺した青年が
実行犯だと分かったものの、詳細は不明のまま。
さらに数年が過ぎたとき、事件当時に生き残った女の子が、
事件の真相を追うべく関係者に聞き取り調査を始める・・・・・。

こういう要約をしてしまうと、王道の推理モノのように見えてしまいますが、
聞き取り調査をする目的が、単純な「犯人を知りたい」という動機ではなく、
特定の者に読ませるためだけに、多大な労力を割くという行為。
そして、インタビューの相手によって、まったく人格が変わってしまったかのような
聞き取り手腕を見せるという人物像に、なんだか「憑き物」のような怖さを覚えます。

そして、狙われた医者一家で無傷のまま生き残った少女は、
目が見えないというハンデを負いながら、それを感じさせない立ち振る舞いを身に付けており、
しかも、ハンデを補うべく他の器官が発達したのか、鋭い洞察力を発揮します。
まるで全て見えているかのように、お見通しであるかのように。

私は、ハンデを背負いながらもしっかりと生きている人に畏怖を感じてしまいます。
並々ならぬ努力をしているということへの尊敬の念がある一方で、
ハンデを補うべく他の能力が抜きんでているということへの恐れに近い驚きです。
ややもすると差別的な発言かもしれませんが、感覚的に畏怖を覚えてしまいます。

この2人の人物が醸し出す怖さに呼応するかのように、
周辺の登場人物たちも、斜に構えた見方をするというか、
どこか捻くれているというか、なんだか不気味です。

ことの真相は、はっきりとは書かれていないのですが、
この不気味さの前には、あまり真相そのものは気にならなくなってしまいました。
人間って、なんて不気味なんだろうかと思えただけで、
読書としては満足してしまった感じです。


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恩田 陸

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