『顔のない敵』
- 2016/05/07(Sat) -
石持浅海 『顔のない敵』(光文社文庫)、読了。

対人地雷を取り扱う世界が舞台で起きた殺人事件についての連作短編集。
冷静に考えると、このNGOの周りで殺人起き過ぎだろ!ということになりますが
ま、そこはご愛敬。

本作では、地雷というのは、単なる小道具として出てくるのではなく、
「一度埋めたら半永久的に殺傷能力を発揮する」
「誰が埋めた地雷の被害に遭ったのか分からない、味方の地雷かもしれない」
「地雷は殺すことが目的ではなく、大怪我を負わせることが目的、怪我人搬送で兵力を使わせる」
「地雷を製造する会社が、地雷を除去する技術を提供し、二重に儲ける」
これらの戦争における狡猾な戦略を下敷きに、
目の前で起こる殺人事件にも、この戦略や思想を反映させていきます。

これにより、物語の世界観が非常に深いものになっていると思います。
端的に表現すると「社会派サスペンス」ということなのでしょうが、
それ以上に、「対人地雷とは何か」ということを日本の読者に理解させるという
大きな役割を担っているように感じました。

相変わらず登場人物は理屈っぽいですし、
殺人の動機もリアリティに欠けるところがあると思いますが、
本作に関しては、「対人地雷」にまつわる理解が深められたので
興味深く読むことができました。

なのに、最後に収録された著者の処女作は、対人地雷の話と無関係。
せっかくの連作短編集としての世界観が、最後に損なわれてしまいます。
ここに収録した理由は、「ここで入れておかないと日の目を見なさそうだから」という
非常に自分勝手な理由。
読後感を既存してまで処女作品を収録するのは、著者の思い上がりではないかと感じました。


顔のない敵 (光文社文庫)顔のない敵 (光文社文庫)
石持 浅海

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