fc2ブログ
『神去なあなあ日常』
- 2016/05/02(Mon) -
三浦しをん 『神去なあなあ日常』(徳間文庫)、読了。

映画化されたときに、ロケ地になったとして
三重県が一生懸命PR活動をしていましたが、
それほどヒットしなかったような印象が・・・・・残念です。

でも、原作本は売れているので、そちらから挑戦。

神去村という架空の村が舞台ということで、
私はてっきり、その所在自他も架空にしてあるのかと思っていたのですが、
しっかり「三重県」って出てくるんですね。
しかも、映画のロケ地が美杉だったので、そちら方面を思い描いていたら、
尾鷲の林業を取材したものだったとは!

タイトルにもなっている「なあなあ」という方言ですが、
「伊勢の『な』言葉」と言われるほど、三重県人は語尾に「~な」と付けてしゃべります。
私自身、この指摘を知るまで気にしたことがなかったのですが、
確かに、「『な』言葉」は柔らかい印象をもたらすのかもしれません。
それに加えて、紀州弁のちょっと強い口調の単語が混じっており、
神去村の面々が話す会話のリズムに酔いしれました。
とても心地よいです。
そういえば、三重弁の作品って、読むの初めてかも。

小説の世界については、お仕事小説+青春小説として
オーソドックスな展開に、神去村の奇妙な風習というアクセントをつけて
安心して読めるユーモアあふれる作品になっていると思います。

林業については、以前、三重県大台町に林業に従事するために
大阪から移住した人の話をきいたことがあったぐらいで、
正直、仕事として詳しい内容を知らなかったのですが、
ちょうど最近、樵のおじいさんを主人公にした映画を見たため、
上手く映像のイメージも湧いて、楽しく読めました。

田舎で自然を相手にする仕事・・・・・という表現をすると、
都会に疲れたサラリーマンの逃避行的な脱サラを思い浮かべがちですが、
本作の主人公のような若者が、そういう仕事に正面から向き合うと、
人間の生活と仕事と社会との関係というような本質的なものに
触れられるような気がします。

若さゆえに、まっすぐに仕事に向き合い、
自分の成長を通して、仕事のやりがいに浸る人生。
そういう素敵なお話になっていると思います。


神去なあなあ日常 (徳間文庫)神去なあなあ日常 (徳間文庫)
三浦 しをん

徳間書店 2012-09-07
売り上げランキング : 4179

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

WOOD JOB! ~神去なあなあ日常~ DVDスタンダード・エディションWOOD JOB! ~神去なあなあ日常~ DVDスタンダード・エディション

東宝 2014-11-19
売り上げランキング : 1598

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ


関連記事
この記事のURL |  三浦しをん | CM(0) | TB(2) | ▲ top
<<『ミハスの落日』 | メイン | 『汚染海域』>>
コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する


▲ top
トラックバック
トラックバックURL
→http://seagullgroup.blog18.fc2.com/tb.php/4828-d507326f
-「神去なあなあ日常」 三浦 しをん-
神去なあなあ日常 (徳間文庫) 美人の産地・神去村でチェーンソー片手に山仕事。 先輩の鉄拳、ダニやヒルの襲来。しかも村には秘密があって…!? 高校卒業と同時に平野勇気が放り込まれたのは三重県の山奥にある神去村。 林業に従事し、自然を相手に生きてきた人々に出会う。 ◆◆◆ 林業は斜陽産業、というのはよく聞く話です。 なり手がいなくて人手不足。なにしろ、他に選択肢があるのにわざわざ大変な道を選ぶ... …
2016/05/03 11:25  BOOKESTEEM ▲ top

-「神去なあなあ日常」三浦しをん-
三浦しをんさんの「神去なあなあ日常」を読みました。 「仏果を得ず」では文楽の世界、「風が強く吹いている」では駅伝、と自分にとって知らない世界を描いてくれる三浦しをんさんの本は目が離せません。 今回は、林業の世界が舞台。 高校を卒業した「勇気」は、何もわからないまま強制的に、研修生として山の中で林業に取り組むことになる。 登場人物も魅力的な人が多いが、何よりも魅力的なのは、林業... …
2016/05/05 23:27  心に残る本 ▲ top

| メイン |