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『贖罪』
- 2016/04/27(Wed) -
湊かなえ 『贖罪』(双葉文庫)、読了。

湊かなえ節全開です!

5人の人物による、様々なシチュエーションでの独白で構成されていますが、
その設定は『告白』を想起させます。

しかし、そのドギツさは、『告白』以上かも
なぜなら、本作の中で5人も殺されてしまうから。

小学校で起きた少女の強姦致死事件。
被害に遭った少女と一緒に遊んでいた4人は、
犯人が少女を連れていく場面に居合わせながら、
事件後に犯人逮捕につながるような情報を提供できず、
怒り狂った被害者の母親は4人に贖罪を求める・・・・・。

20年前なら、このような物語は、リアリティがないとされていたかもしれません。
しかし、現在、このような展開はありうるのではないかと思えてしまいます。
4人が辿ったその後の人生が、いずれも殺人というところに行きついてしまったのは
さすがに小説世界の話だとはしても、
被害者の母親がヒステリックな行動を起こしたり、
その行動がきっかけになって4人の少女の人生が大きく歪んでしまったりということは
十分にありうることのように思います。

4人の少女も、被害者の母親も、
事件をきっかけに大きな傷を受けており、
可哀想だなと思う一面はありつつも、共感までは至らないのは、
保身の言い訳が言葉の端々に充満しているから。

そんな中で、真紀の話だけは、身に染みてきました。
「きちんとしなければいけない」「しっかりしなければいけない」という強迫観念は
少なからず子供のころの私も持っていたからです。
親の思いを受け止めなければいけない、周囲の期待に添うようにしなければいけない、
そういう思いに駆られて、今の私があるように思います。
この小説のように、変な方向に捻じれることがなかったので、
今の自分には満足できていることが幸いです。

もし、自分が真紀の立場になったら、
事件当時に上手く立ち回れなかった自分を反省し、悔しく思い、嫌いになったのではないかと。
そして、次に迎えた新たな事件において、自分を取り戻すべく、
英雄になるための行動をとるかもしれない、真紀のように・・・・・・と思いました。
(思うだけで、たぶん行動は無理ですけど・・・・)

子供は、子供なりの理屈で世界を捉えているんだな、
自分も、子供のころに自分なりの理屈で周囲の世界を捉えていたんだなと
再認識させてくれる本でした。


贖罪 (双葉文庫)贖罪 (双葉文庫)
湊 かなえ

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