『対岸の彼女』
- 2016/03/09(Wed) -
角田光代 『対岸の彼女』(文春文庫)、読了。

直木賞受賞作ですが、納得の読後感。

専業主婦の小夜子が仕事を再開するに当たって出会った同い年の女社長・葵。
現在の2人の状況は小夜子の目を通して、そして高校時代の話は葵の目を通して描かれますが、
この構成が非常に計算されているように感じ、どっぷりと本作の世界感にはまってしまいました。

専業主婦で幼い子供が居る小夜子と、独身で女社長の葵。
彼女たちと同年代の女性が読めば、当然、どちらかの立場から作品の世界を眺めるわけで、
当然、独身の私は葵の立場で本作に臨むことに。

その際、現在の、働いている葵については、小夜子の立場から語られるというのがミソで、
つまりは、「私って、同年代の子供を持つ人からどんな目で見られているのだろうか?」というところに
どんどん思いが飛んでいきます。

葵の私生活をやや犠牲にしたというか、私生活に構っていずに仕事に時間を回す生活とか、
細かいことは気にしていないような割り切った物言いとか、
かといって、ちょっとした小夜子の反応を気にしたり、傷ついた様子を見せたり、強がったり。
こういう一つ一つの描写に、自分を重ねて見てしまいます。
特に、「子供を持つのが怖い」という発言には共感してしまいました。

一方、そんな葵を生み出すもととなった高校時代の物語は、
現在の女社長の様子とは打って変わった、いじめの悲しみを背負い、受け身で友達についていく少女。
これまた、周囲の様子に合わせよう、みんなと仲良くしよう、でも距離は適度に取って・・・・と
心を砕いていた自分自身の子供の頃を思い出しました。

独りぼっちにはなりたくないけど、どっぷり女の子集団に入り込むのも抵抗があり、
各グループと適度な距離感でバランスよく付き合いつつ、
登下校は一人で気楽にさっさと歩いていってしまうような子供でした。

自分と重ねたときに、この葵という人物の人生が立体感をもって迫ってきて、
物語を構成する要素の1つ1つがとてつもなく綿密に練られたのではないかと思えてしまいます。

最後、どのような終わり方になるのか、自分ごとのようにハラハラしてしまいましたが、
救いのあるエンディングでホッとしました。

読書をしながら、登場人物たちの人生を通して、
自分のことをあれこれ考えることができるというのは、素晴らしい体験だと思います。
さすがの直木賞受賞作でした。


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角田 光代

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