『きっと君は泣く』
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- 2015/12/27(Sun) -
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山本文緒 『きっと君は泣く』(角川文庫)、読了。
山本文緒の世界観、畏怖を覚えながら、好きだと答えます。 自分の美貌に自身のある主人公。 母は地味でつまらない女、父は事業家だが浮気性でダメな男、その2人を蔑む主人公。 祖母は妾として人生を送り、主人公はその矍鑠とした姿に憧れる・・・・。 この人間関係の設定だけで、かなり読ませてくれる内容になっているのに、 中盤以降、一気に新展開が押し寄せ、勝気な主人公はぶちのめされる・・・・。 この主人公、かなり人生なめてる感じの女性なのですが、 不思議と私は嫌な印象を持ちませんでした。 むしろ、その孤独さに共感を覚えてしまうほど。 外に向かって刺々しいか否かを別にしてしまえば、 この主人公のように世間を突き放して無関心に眺めている自分や、 他人を蔑んでいる自分、自分の将来を理由もなく肯定している自分がいます。 そんな境地で読み進んでいたら、 主人公が身近な人に、「あなたに足りないのは想像力だ」と叱られたシーンにぶつかり、 自分自身、ギクッとしてしまいました。 私も、自分の将来について計画を立てるのは好きですが、他人の動きを想定して想像するのは苦手です。 自分の行動のみを考えてしまいがちです。 他人がどう思うか、他人がどう反応するか、そういうことを考えるのが面倒だと思ってしまいます。 また、どれだけ考えても分からないからムダだと、最初から考えないようにしてしまっています。 そんな自分を、この作品の登場人物に、ズバリと指摘された心持ちになりました。 やっぱり、山本文緒の世界観はエグイです。 主人公を、一回どーんと谷底に突き落とすような展開を作るので、 主人公に共感していると、自分自身もどーんと谷底に突き落とされてしまいます。 それでも、次の作品を読みたくなってしまうのは、 著者の力量のせいなのか、なんとかエンディングで光が見出せるような作品に仕上がっているからなのか。 いろいろ考えてしまう読書でした。
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