『OUT』
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- 2006/12/13(Wed) -
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桐野夏生 『OUT』(講談社文庫)、読了。
ヒットした犯罪小説という程度の認識で読み始めたのですが、 主婦4人の心理状態の変遷が見事に描かれていて、圧倒されました。 特に、主人公・雅子の孤独感・閉塞感は、 下巻に来ると重苦しいまでに描き切られており、見事。 ただ、読んでいる間の感想としては、「面白い」というものではありませんでした。 むしろ、家族からも遊離した雅子、日常に圧迫されたヨシエ、 軽薄で短絡的な邦子、責任感を持ち合わせていない弥生、 それぞれの苦悩や人間性の欠陥を見せ付けられているようで、 読んでいて気が重くなったときも多々ありました。 OL生活の長かった雅子や、時代が一昔前のヨシエは別として、 邦子や弥生は、「いまどきの主婦」という 一般社会との接合面が狭い人々が陥りがちな独特の思考回路を持っているようで、 その身勝手さに怒りすら覚えるときもありました。 格差社会という言葉が世に広がって久しいですが、 本作で描かれているような低所得者層の主婦たちの世界は拡大しており、 さらに、他の階層との距離が広がることで、 相互理解もままならなくなってきてるのではないかと思います。 そして、雅子は、低所得者層と中流階層の間の溝に独りで落っこちた 哀れな人間なのだと思います。 主婦4人を描いているように見えて、やはりこれは雅子の小説です。
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